にし人西陣のひと

be京都西陣で続ける意味がきっとある
~西陣の暮らし、文化を学び、継承すること~
「be京都」館長岡元麻有さん

今回は、同志社大学新町キャンパスの北側で、築200年を超える京町家を拠点に文化・芸術・活動のコミュニティスペースとして様々な活動を展開されている、「be京都」館長 岡元 麻有さんにお話を伺いました。

「be京都」を立ち上げられた経緯を教えてください。

私が館長をしている「be京都」は、 2007年にオープンして、今年で13年目になりますが、はじめは主人が京都を拠点に文化・芸術に関わる仕事をしたいということでスタートしました。

私は、兵庫県の出身で、大阪や東京で働いていたのですが、主人の仕事を手伝うということで京都にやってきました。手伝っているうちに、自分が館長になり、ここを磨き上げていきたいという思いが強くなってきました。私は、根っからの京都人でも、京都ファンでもなく、気が付いたら「be京都」の館長になっていた!という感じです(笑)。

とてもいい京町家ですね。

押入れの中から文政年間(1818年~1831年)のものと見られる記録が出てきましたので、築200年を超えています。

京都でやるなら、趣のある京町家でしたいと思って、不動産業者にも当たりましたが、結局は町をぐるぐる見て回っているときに、偶然、この京町家に出会ったんです。

私たちが見つけたときは、数年間空き家になっていたことと増改築が繰り返されていたので、建物も、庭も荒れ放題で、直ぐにギャラリーとして使える状態ではありませんでした。リノベーションでは、町家のギャラリーとして、自然光を取り入れて、開放的な空間にすることと、残せるものはできるだけ残すことにこだわりました。

実は、京都市景観・まちづくりセンターの「京町家まちづくりファンド」の助成を活用した第1号なんです。

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ところで「be京都」の名前の由来は何ですか。

「存在する」を意味するbe動詞の「be」と、美しいの「美」をあわせ持ちます。「美しい」京都が「存在」し、「be動詞」が主語によって変化するように、「be京都」に集まる方が、個性を存分に表現していただきたいという想いを込めています。

ビートルズの名曲「LET IT BE」も大好きなので、「be京都」の「be」はそこから由来もしています。

「be京都」の事業について具体的に教えてください。

さまざまなことをしていますが、共通するのは、文化・芸術をテーマに、多様な人が集い、学び、発信する場ということでしょうか。

具体的には、「be京都」には「ギャラリー」と「レンタルスペース」があり、お客様にお貸ししたり、独自企画を行ったりしています。

「ギャラリー」は、1階の土間部分と2階の吹き抜けの部分で、作品展、イベント、制作発表の場としてご利用いただいています。今(取材時2019年6月)は、テーマに沿った絵はがきをアーティストから募集して、誰もが気軽に作品を展示・販売できる企画として「ポストカードコレクション」を実施中です。(夏・冬年2回開催)

「レンタルスペース」は、1階の和室と2階の洋室で、日本の伝統文化や学びの講座、各種イベントなどにご利用いただいています。2階は昨年フォトスタジオとしてリニューアルもしました。

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西陣の魅力について、どのように感じておられますか。

私たちは、元々、西陣にこだわっていたわけではなく、京町家を決めたら、そこが西陣だった!というのが正直なところですが(笑)。

西陣は、西陣織をはじめとして最高級の文化・芸術が花開いてきた土地。そのため、例えば、近所のおばあさんが、昔は職人をされていて、今でも素晴らしい技術を持っておられたり、知識や経験が豊富な方がそこかしこにおられるのが魅力の一つですね。

それから、西陣に暮らしていて思うことは、道に落ちているごみが少ないこと。ここに暮らす人たちが、門掃きを欠かさずして、家の前も鉢植えの花できれいにされている。京都に暮らす人、西陣に暮らす人としての誇りを感じます。

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いけばなをテーマに、年中行事を継承しようという企画をされていますね。

私自身、元々文化に深く親しんだ生活をしていたわけではなかったんです。町家に来た当時は、床の間をどうしたらよいのかわからなかったり。でも、お客様に教えていただきながら、1つずつ学んでいきました。

そうした中で、生活と密着している京町家を会場に、伝統の年中行事をできるだけ気軽に、楽しみながら体験してもらえればと思い、お花を通じたワークショップをしています。こんなことを昔の人はしてきたんだ、こんな意味があったんだ!ということを、発見してもらえる、そして、自分にできる形で実践や継承していってもらえれば嬉しいですね。

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講座には子どもたちの姿も多くありますね。

子どもたちは、とても素直で、四季の移ろいや季節の花々の美しさなど、思ったこと、感じたことを伝える力、言葉にする力を、皆が秘めています。京都には日本中、世界中から様々な人々が訪れます。自分の言葉で伝えることができたら、世界に通じる人になれると思います。私自身も子どもを持つ母親として、子どもたちが暮らしの文化を学ぶ中で、そうした力を身につけていってもらえたら素晴らしいですね。

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今後、どのようなことに取り組んでいきたいですか。

もっと世界に目を向けて、文化・芸術の普及に取り組んでいきたいですね。例えば、海外で日本のアーティストの作品展を開催したり、逆に、海外のアーティストを京都に誘致してきたり。拠点としての「be京都」はしっかりと守りながら、西陣を世界中から注目されるまちにしていきたいですね。

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最後に、西陣のまちが将来どうなっていけばいいと思われていますか。

一言で言えば、西陣に「まちなみ」ができたらいいなと思います。西陣には、魅力的な資源がたくさんあるけれど、今はそれが「点」として存在していて、一つの「まちなみ」にはなっていないと感じます。先日も、「be京都」を訪れた方に「西陣織の生地がほしいのだけど」と言われて、どこを紹介すればいいのか思いつきませんでした。西陣で暮らし、営む者が、お互いのことを紹介し合えるような関係性を築くことで「まちなみ」を作っていけたらと思っています。

大都市でありながら、歴史・文化・芸術が色濃く残っていることが、このまちの最大の強みだと思っています。大人も子どもも皆、この地にいることに誇りを持っていければ、もっともっと素晴らしいまちになっていくと確信しています。

(2019年7月26日公開)

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詳細情報

企業名・団体名be京都(株式会社ステーション)
営業時間・定休日など10:00-18:00・金曜日休館
公式サイトhttps://www.be-kyoto.jp/
問い合わせ先be京都 電話:075-417-1315
(京都市上京区新町通上立売上る 安楽小路町429-1)

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