にし人西陣のひと

西陣で続ける意味が、きっとある。
~お寺を拠点とした地域の活性化~
企画コーディネーター菅真継さん

今回は、上京区にある日蓮宗大本山 妙顯寺で、特別公開に合わせて、伝統工芸品の展示や、ライトアップなどのプロデュースを手掛け、地域の活性化に向けて精力的に取り組まれている菅真継さんにお話を伺いました。

妙顯寺「秋の特別拝観」について、教えてください。

今年(2018年)は、11月10日~12月2日に宝物庫の公開や伝統工芸品の展示、お抹茶やお菓子のほか、夜間には幻想的なライトアップを行います。伝統工芸品は、着物や提灯など、現在活躍されているアーティストの方たちの展示、それに加えて、これからの未来を支えていく若者たちの応援のため、京都伝統工芸大学校の学生たちによる作品展も行っています。

▲2017年の様子

地域の活性化のために活動される、きっかけは?

私は、北野商店街が地元ですが、今は、寺町商店街でアパレル関係のお店をしています。3年ほど前になりますが、地元を歩いていたら、昔よく行っていた駄菓子屋さんが閉まっている、いつも喋っていたおっちゃん、おばちゃんの姿がない、ということに、はっと気付き、これはまずいと思いました。そこで、この地域のために何かできないか、人を呼び込めないかと考えたことが、きっかけです。

 

なぜ、お寺に注目されたのですか?

何ができるか考えた際に、まず地図を開きました。そこで目に留まったのが、お寺、神社でした。ここに人を呼び込み、伝統文化を感じて、地域を歩いてもらえれば、何かきっかけになるのではないか、とにかく人を呼び込むチャンスがそこにあると漠然と感じました。それから縁あって、妙顯寺さんをご紹介いただきました。ただ、ここまでの道のりは簡単じゃなかったです。いきなり若いやつが来て、あれこれやらしてほしいと言うわけなので、こいつは誰だという状態で大変でした(笑)。なので、お寺の草抜きや掃除をしながら、徐々に信頼関係を築いてきました。

そうして、ライトアップに繋がったのですね。

はい。今までから特別拝観はされていて、関心のある方は来られるのですが、若者たちの認知度が低く、若者たちがお寺に行く理由はなかなかないと思います。でも、将来を考えると、今、若者たちが来る理由を作っておかないと、お寺は衰退していく、そして、地域も衰退していくことになると思います。まずはお寺に来るきっかけを作りたいとライトアップを考えました。

ただ、派手なライトアップについて、関係者の方々には、色々な想いや意見、不安などあったと思います。なので、私もなんとか成功させようと、必死でした。チラシを夜中に1人でポスティングしたり、道行く人に配ったり、また、予算もなかったので、ライトアップのセッティングも1人でやっていました。自分の性格もあるのですが、やると決めた以上、覚悟をもってやらなければと。家族にもきちんと相談し、自分の本業もセーブしました。

そして、昨年、近くの本法寺、妙覚寺の三寺院合同で開催し、8、000人の方に来ていただきました。また、今年の春の特別拝観では、妙顯寺だけで2、400人と、以前と比べて約3倍の方に来ていただくことができました。

ライトアップをしてみて感じられたことはありますか?

ただ単に人が来ればいいというわけではなく、そこで何を伝えるのか、何を感じてもらうのかが非常に大事だと感じました。例えば、お寺独特の空気感や、車の音がしない、普段感じられない静けさを楽しんでほしい。これほど贅沢なものはない。それぞれ感じることは違うと思いますが、何かに気付き、何かを感じてほしいし、それができる場所だと思います。

また、今回の企画では、実際に地域の方にも手伝っていただいています。このようにお寺と地域との距離が縮まると、地域の人が積極的に関わってくれます。地道ですが、この繰り返しが大事。地域に支えてもらい、そして、地域のために貢献する、持ちつ持たれつの関係だと思います。

そして、活性化という点では、お寺だけでなく、その周りも散策して、京都の中の京都の雰囲気、地域の美味しいお店などを発見し、楽しんでほしいと思います。

▲インタビュー中に地域の方と談笑する場面

地域を盛り上げるために必要なことは何ですか?

地域が盛り上がるためには、若者をうまく取り込むことが必要だと感じます。妙顯寺では、今の貫首さんが、若手の意見を必ず聞いてくれる。派手なライトの色など、普通であれば戸惑うことでも1回チャレンジさせてくれ、多くの若者の来場につながりました。

一方、今の若者に聞くと、京都は面白くない、遊ぶ場所がないと言う。じゃあ面白くないなら自分たちで面白くすればいい。以前は、自分自身もまちに面白さを感じられていない時もありましたが、今は、活動を通じて、様々な喜びが見つかり、楽しくて仕方ない。一人ひとりの力で西陣は絶対に変わるので、若い人は、人任せにせず、もっとチャレンジしてほしいです。

そして、住んでいる地域の人たちの、ちょっとした意識の変化や協力も重要です。今のところ僕は少数派の人間だと思うのですが、それが逆転して、大多数の人が、地域のために地域を盛り上げようとなれば、誰かが特別に力を入れなくても、地域は盛り上がる。ほんとにちょっとした意識が大事だと思います。

西陣のまちに対する想い、将来への抱負をお聞かせください。

私は商店街で育ち、子どもの頃から自然と店のお手伝いをしてお客さんと接していましたし、近所のおっちゃんから声をかけてもらったり、人とのつながりの中で育ってきたと実感しています。この地域の魅力はと聞かれれば、やっぱり人の魅力だと思います。

そして、個人的には、上京区全体のお寺や神社を繋げて、合同宝物展をやりたい。どんな地域にも小さいお寺や神社があるので、それらをつなげて地域を歩いてもらう。すると、知らないお店やスポットなど必ず発見がある。その発見が次また歩く理由になる。これには、多くのハードルもあるかもしれませんが、きっかけを誰かが作らないと始まらない。そう思いますね。

(2018年11月16日公開)

 

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