にし人西陣のひと

西陣で続ける意味が、きっとある。
~新しいチャレンジで西陣織の技術を次の世代に~
(有)フクオカ機業 代表取締役福岡 裕典 さん

西陣を中心とした地域において、ものづくりやまちづくりなど様々な分野で活躍されている方々に、取組の内容、未来への展望をお聞きします。
今回は、「京都市西陣を中心とした地域活性化ビジョン検討委員会」委員でもあり、世界に誇る西陣織の技術を新しいものづくりへと展開されている(有)フクオカ機業の福岡裕典社長にお話を伺いました。

写真:笑顔の福岡さん

フクオカ機業の概要をお教えください。

明治35年に創業し、西陣の地で、帯や能装束等の伝統的な西陣織を製造しています。また、西陣織の技術力を活かし、新しい素材として炭素繊維の織物を製造しています。

西陣織の家に生まれ、西陣織をすぐ身近に感じてこられました。西陣での暮らしとはどのようなものでしたか。

私が小学生の頃は、両親とも朝から晩まで工場にいたので、学校から自宅に帰らず、直接、工場へ帰ってきていました。毎日ガチャガチャと機音を聞きながら、職人さんの邪魔をして、「ちょっと織らして」と言って織らしてもらったり。また、表の路地で友達とキャッチボールをしたりして遊んでいましたね。うちの子どもは小学生ですが、今も同じように遊んでいます。
この辺の路地もみんな家の中に織機を置いて、ガチャガチャ音がしていました。今の人からしたら、うるさいなと思われるでしょうが、我々からすると、それが当たり前でしたね。今は逆に静かすぎて、ちょっと寂しいなと思います。

西陣織は世界一流の技術と言われますが、どういった特長があるのでしょうか。

西陣は細い糸を繊細に織るのが得意な産地なんです。細い糸をたくさん合わせてボリュームを出すことで、絹糸の独特の光沢が出てきます。これが西陣織の特長で、それを支える技術力が素晴らしいと思います。この技術力によって、儀式用の着物など、格調が高いものの注文は昔からほとんど西陣に集まってきます。
写真:西陣織を織る様子

一方で、課題についてはいかがですか。

今は時代の流れで、需要が減っており、西陣織産地全体で苦しい状況があります。その中でも、西陣はいつでも高度な注文に対応できることが求められており、若い人に技術を伝えていかなくてはなりません。そのためには、時代に合った新しいものづくりも必要だと思っています。

西陣織の技術に炭素繊維を組み合わせて新しい素材に挑戦されているそうですね。

和装の需要が減少する中で、まだ仕事があるうちに、何とかしなければと早くから危機感を持っていました。
そんな時、阪神大震災後の補修工事で炭素繊維が大量に使われていて、取り組んでみないかという話が来たんです。最初はうまくいきませんでしたが、織機の改良など試行錯誤を繰り返し、5年かけて技術を開発しました。
写真:炭素繊維を織り込んだ生地。独特の光沢がある。
今では、繊細な織紋様で華やかな商品をつくるという西陣織の特長を活かして、バッグや小物などのほか、自動車の内装など、様々な用途に展開しています。

フクオカ機業には若い職人さんが多いですね。

技術を継承するには、若い人に伝えないといけないので、積極的に若い後継者の育成に取り組んでいます。
若い職人からすると、自分の一生懸命やった仕事がどのように使われているのかを知ると、また次頑張ろう、という気持ちになります。炭素繊維などの産業資材は分かりやすいですが、着物や帯でも、お客さんとの交流を図っていきたいと思い、イベントでの工房公開や、オーダーメイドされた方に工場に見に来てもらったりしています。
一方で、お客さんも、どこで、どんな職人さんが、どんな思いで作っているのかを知りたいと思われていて、実際に工場に来ると、とても満足され、安心されます。
写真:織機のレバーを握る若い女性の職人

最後に、西陣への想いをお聞かせください。

西陣織は、長い歴史の中で受け継いできた技術力が素晴らしく、世界からとても高く評価されていると肌で感じています。これまで500年以上培われてきた技術ですし、若い職人に技術をつないで、今後、2千年も3千年と伝えていきたいですね。そのためにも、西陣の技術力と、ベンチャー企業や新しいアイディアとのマッチングで、新しい素材を作って、世界に出していけたら素晴らしいと思います。
また、明治35年の創業からこの地で生産を続けてきており、この西陣で生産を続けることにこだわりを持っています。西陣織を、歴史や文化を育んできたこの西陣の地で生産し、技術を将来につないでいく、そんな原点に戻るのに、今はちょうどいい時期ではないかと思います。

(2018年3月30日公開)
写真:フクオカ機業社屋を正面から

詳細情報

企業名・団体名有限会社フクオカ機業
公式サイトhttp://www.fukuoka-k.co.jp/index.html
問い合わせ先有限会社フクオカ機業
TEL:075-441-0235 FAX:075-441-0549

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