にし人西陣のひと

西陣で続ける意味が、きっとある。
~世代を超えて受け継がれる西陣の文化・暮らし~
鳴橋庵鳴橋明美さん

今回は、「京都市西陣を中心とした地域活性化ビジョン検討委員会」委員であり、「鳴橋庵」で伝統産業の京くみひもに携わりながら、5月に開催される「能舞台フェスタin今宮御旅所」の実行委員会の会長を務めるなど、まちづくり活動や暮らしの文化を次世代に伝える取組をされている、鳴橋明美さんにお話をお伺いしました。

鳴橋庵について教えてください。

鳴橋庵では、京町家の店舗を拠点に、京くみひも・飾り結びの商品を取り扱っています。また、販売だけではなく、京くみひも体験やお抹茶体験、さらには京都のお話もさせていただいています。

鳴橋庵はご実家とお伺いしました。

はい、この鳴橋庵は私の実家で、ここで生まれ育ちました。昔は奥が土間になっていて、両親は西陣織を織っていました。町家は基本、夏仕様で風通しが良いので、冬はすごく寒かったです。毎朝、火鉢で火を起こしていましたが、ちっとも暖かくならなかったですね。現代の家と比較すると機能的ではなかったかもしれませんが、やはり、木に囲まれた町家、その中での生活の美しさは、いいなと今になって思います。

伝統産業に携わりながら、まちづくり活動にも関わられたきっかけは。

きっかけは、上京区役所が地域コミュニティ活性化の一環で取り組んでいる「カミング」です。
「カミング」は、地域の様々な方に取材して情報発信しているものですが、ホームページを見ていて、頑張ってください、とメッセージを送ったことをきっかけに取材に同行することになり、気が付けば、いつの間にか取材コーディネーターになっていました。
元々、歴史や文化には興味がありました。西陣空襲などもあり、住まいは何度か変わっていますが、私の家系は上京区に住んで300年ほど経っています。そうした中で、受け継がれてきた歴史などを母から色々と聞いたり、昔からの習わしなども教えてもらうなかで、歴史や文化に興味を持ち始めたのだと思います。
※カミングについては、こちらのページ参照 http://www.kamigyo.net/

5月4日に開催される「能舞台フェスタin今宮御旅所」の実行委員会会長も務められているそうですね。

はい、今年5回目になる「能舞台フェスタin今宮御旅所」は、「カミング」での取材を通じて出会った人たちとの繋がりで始まったものです。
小鼓の人間国宝の故曽和博朗氏を取材した時に、今宮神社の御旅所にある能舞台で初舞台をしたと聞き、見に行ってみると、素晴らしい能舞台でした。今宮神社の絵馬堂を見ると、謡の奉納額がたくさんあることからも分かるように、西陣の人は教養として謡を習っていて、能舞台も西陣の人たちの寄進で維持されてきたんです。でも、昭和40年代頃から使われなくなり、荒れた状態になっていました。それで、何とか地域の方のために活用できないか、と。
能舞台フェスタの一番の目的は、能舞台の復活です。ただ、建築物としての能舞台の復活は、大きな資金が必要になり、非常に高いハードルがあります。そのため、「若者と地域の方の発表の場」、「昔からあった地域コミュニティの場」として、機能面での復活を目指しています。
現在、地域の役員の方々や高校・大学の学生さん、西陣の朝市マルシェにも協力いただいており、今後も徐々に地域の方に働き掛けるなど、取組の輪を広げていきたいですね。

ご自身でも歴史・文化を伝える取組を展開されているそうですが。

「カミング」では、上京・西陣の色々な方との出会いや、滅多に聞けない貴重なお話をお伺いしてきました。そうしたなかで、自分でも歴史・文化を伝えていきたいと思い、「京都上京KOTO-継(ことつぐ)の会」を始めました。
京都らしい建物や寺社など目に見えるものも大事ですが、私が母から教わってきた習わしや習慣、京都らしい生活に根付いた文化など、目に見えないものを受け継いでいく必要もあると思いますし、そのお手伝いを「京都上京KOTO-継(ことつぐ)の会」を通じて、やっていきたいと思っています。

今後の西陣への想いをお聞かせください。

西陣では、若い方や外の地域から来た方など、新しい住人さんが想いを持って、熱心にまちづくり活動に取り組まれています。そういう方々と、地域に長く住んでまちを支えておられる方々との接点がもう少し増えてくるといいなと思っています。
私自身、明確な答えがあるわけではないのですが、そうした思いから、様々な人や団体、活動をつないでいきたいと思いますし、皆さんが持っているこの西陣のまちへの“愛着”を繋ぐことで、西陣のまちが良い方向に向かい、西陣らしさが感じられるまちであり続けてほしいですね。

(2018年4月25日公開)

 

詳細情報

企業名・団体名鳴橋庵
公式サイトhttp://www.naruhashi.com/
問い合わせ先鳴橋庵
TEL:090-9057-4407

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