西陣で続ける意味が、きっとある。
~アート・デザインの力を借りて魅力的な都市空間を創る~NPO ANEWAL Gallery 代表理事飯高克昌さん
今回は「外に出るギャラリー」をコンセプトに、西陣にある築130年以上になる京町家を拠点として、アート・デザインの力を公共空間に活かす活動を展開している、特定非営利活動法人ANEWAL Gallery(アニュアルギャラリー)の代表理事、飯高克昌さんにお話を伺いました。
西陣、町家での活動のきっかけを教えてください。
京都で大学を卒業後、設計事務所に勤めていましたが会社を辞め独立する際に、地元東京に戻るか、京都に残るかの判断を迫られました。京都には文化的なものを中心に他の都市には持ち得ないもの、日本のオリジナルとも言える様々なものがあり、また東京を経由せず直接世界に関わることができると思い、京都で活動を始めました。
しかし活動の場として最初から町家を考えていたのではなく、仕事場と自分の生活空間、さらに人が集まれる空間を持った物件を探しているなかで、中庭でパブリックとプライベートが分かれていて、京都の生活文化の入れ物とも言える町家がイメージにぴったりはまりました。また、京都と言う都市は人のスケール感で作られていると感じており、西陣は特に古い街区が残っていて人と付き合いやすいというか、人と人、人と自然の距離感がちょうどいい。そういったことに納得ができて、西陣の町家を選び活動の拠点としています。
ANEWAL Galleryを始めた想いやきっかけは?
私たちは「新たな視点や価値観と出会う場」をギャラリーと定義し、アートやデザインの視点や力を活用し、広く都市や公共空間にそういった場やハプニングをどんどん仕掛けていく「外に出るギャラリー」をコンセプトに活動しています。ただ、町家に住み始めた当初からこうした活動をやろうと思っていたわけではありません。町家に住み、地域の方々と交流する中で京都の文化や伝統など色々と教えてもらうことが増え、これまで自分が勉強してきたアートやデザインで都市やまちをより良くしたいという想いが生まれ、ANEWAL Galleryの活動に繋がりました。
町家に住む中で、どういった交流があったのでしょうか。
本当に多くの方に助けられて来ましたが、特に大家さんとこの建物をきっかけに知り合った日本建築専門の建築家の方には本当に多くの事を教えて戴きました。大家さんからは、京都の文化、西陣の暮らしや祭事、例えば、今日は〇〇の日なのでこれを食べなさいなどを教えてもらいました。建築家の方からは、建築としての町家についてはもちろん、成立の経緯や歴史、背景にある思想、京都の都市空間や諸芸術と町家の関係、どんな人がどんな生活をしてきたかなど、多くのことを学びました。こうした交流の中で、京都の審美性を実体験と共に学ぶことができたと感じています。
地域活動など幅広い分野で活動されていますが、どのような想いがありますか。
地域で行われている色々な活動について、これはまちづくり活動、これは産業振興の為の取組、文化の取組など切り分けて捉えられがちですが、私自身はこれらは西陣というエリアで循環する営みへの働きかけだと考えています。
ANEWAL Galleryでは展覧会はもちろん、海外のアーティストに滞在・制作してもらうアーティスト・イン・レジデンス、路地での子どもとの遊びの取組、また、大学生を中心とした都ライトの取組など端的に見れば脈絡のない多くのプロジェクトに関わっているように見えると思います。しかしながらどの取組も西陣の空間が創造力に溢れ、みんなの想像力を刺激するようなまちになればと言う共通の目標があり、まちと言う一つの総体に対し個々のプロジェクトの立ち位置が異なるだけで全てが目標に対して明確に繋がっているので、別々の事とはあまり意識していません。西陣という空間の中で、アート・デザインの切り口で何ができるかを常に考えています。
上京こどもの路地実行委員会の取組について教えてください。
このプロジェクトは路地内での遊びを通して、子どもから大人まで安心安全で住みやすく、子育て空間に適した場所として路地を考える機会になれば、また、路地が多く残る上京区において、その活用を上京らしさの発信に繋げられればという想いで始まったものです。6月2日「路地の日」に行った「路地であそぼ第2弾」では、地域の方々の協力を得て、紙飛行機を飛ばすゲームをしたり、路地内の道路に子どもたちみんなで絵を描く、つまり落書きをして、最後は水で流して綺麗に掃除するところまでをイベントにしました。
路地については元々関心があったのですが、いろんな活用アイディアは方々で提案されているものの、なかなか実際の取組につながらない状況をもどかしく感じていて、「自分でやろう」と思い立ってプロジェクトを始めました。路地の多い西陣でアクションを起こすことで、古い町並みや街区を持つ他のまちや都市にも広がっていけばと思っています。
こうした活動に大事なことは何でしょうか。
プロジェクトに当たってはワクワクすることが大事だと思っています。路地の落書きだってワクワクする。まあ、勝手にやったら怒られそうですが、ワクワクを形にすることは非常に大事だと思います。
路地の重要なポテンシャルの一つに子育てに適していると言う事が挙げられます。だからと言ってただ「路地で子育てしましょう」と言うだけでは、なかなか人は集まらないし動かないし惹かれない。路地での子育てと何かもう一つワクワクする別のものを組み合わせたプロジェクトをすればいいのではないかと思います。そう言った路地の魅力を活かした取組が積み重なって子どもや若い夫婦、クリエイターであったり、起業しようという人の想像力を刺激出来れば色んな面で良い影響が出てくるように思います。
将来の西陣のまちへの想いをお聞かせください。
西陣の空間の良さを活かしながら、自分たちを含めそこに暮らす人たちが楽しく住める、ワクワクするまちになって欲しい。個人的には、おもしろいハプニングに出会える歩いて楽しいまち、空間になればいいなと思います。
そのために、自分たちが力になれれば、ANEWAL Galleryの都市空間への文化や芸術・デザイン的な視点を活かしていければと思います。将来としては、国内だけではなく世界中に、西陣は楽しいまちだよとみんなが笑顔で言えるようになればいいですね。
(2018年9月12日公開)
詳細情報
企業名・団体名 | NPO ANEWAL Gallery |
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公式サイト | http://gallery.anewal.net/index.html |
問い合わせ先 | NPO ANEWAL Gallery 電話 075-431-6469 |