西陣で出会う スペイン・バスクの美食 -ご夫婦で紡ぐ、食と文化を味わうレストラン-
西陣に学ぶ traditional culture, art, history and technology.

織のまち西陣。旦那衆に支えられてきた料亭文化が息づく一方で、フレンチやイタリアン、スパニッシュといった西洋料理も静かに根づき、衣食住が重なり合う豊かな暮らしが続いています。そんな西陣で、遠くスペイン北部バスク地方の食と文化に出会える一軒があります。ご夫婦ふたりで営むレストラン「CASA NANA」です。
■バスクという文化
バスク地方はスペインとフランスの国境にまたがる山と海の国。独自の言語と文化を守りながら、フランス料理の技法も柔軟に取り入れ、「美食の地」として世界中から注目されています。なかでもサン・セバスティアンは、1㎢あたりのミシュラン星の密度が世界一といわれる美食都市。伝統と革新が共存するその姿は、文化とアートを大切にする西陣の気質ともどこか重なります。
■上品でやさしい食卓
バスク料理の象徴として知られる「ピンチョス」は、小皿料理をカウンターに並べ、気軽に立ち寄って楽しむバルスタイル(スペインの食堂兼酒場文化)で親しまれてきた食文化のひとつ。CASA NANAではその賑やかなバルの雰囲気とは異なり、上品に整えられたナイフとフォーク、そしてお箸がやさしく添えられます。料理は取り分けやすいよう、いつも小さなトングが用意され、自然体で食卓を囲める温かな空気が流れています。

■本場で磨いた味
オーナーシェフの高杉勇大さんは、ハイアットリージェンシー京都でフランス料理、イタリア料理の経験を積んだのち、単身スペインへ。サン・セバスティアンのバルで修業し、本場の味と精神を体に刻みました。帰国後、ご縁に導かれこの西陣で奥様とともに店を開きます。気さくで穏やかなシェフと、やさしく店を支える奥様。おふたりの自然体のもてなしが、店の居心地のよさをつくっています。

■ワインと寄り添う料理
料理はどれも美しく、ワインと響き合う味わい。

やわらかな酸味と旨みが広がる鰯の酢漬け、旬の素材を活かしたぶりと苺のマリネ、火入れの妙が光る肉料理など、一皿一皿に素材と向き合う誠実さが表れています。


なかでも「本日のおすすめ」に登場するパエリアは、季節ごとに表情を変える一皿。この日は“浅利のパエリア”。旨みをやさしく引き出した軽やかな仕立てで、バスク地方の郷土料理「あさりごはん」の特徴を感じさせます。レモンを軽く絞ってさっぱりと、最後まで心地よく楽しめます。

仕入れ、熟成、調理に至るまで丁寧に重ねられた工程が、静かな深みとなって皿の上に現れます。
■幸せを運ぶNANA
店内にはさりげなくバスクの気配が漂い、温もりと落ち着きが同居します。
店名の「NANA」は、オーナーシェフの歩みに由来しています。かつて勤めたイタリアンの店「Sette(セッテ)」、そしてバスクで修業した「Zazpi(サスピ)」はいずれも数字の7を意味する名前。自身の店を持つなら“スリーセブン”にちなんだ名前にしたいという想いから、日本語で親しみやすい「ナナ」と名付けられました。覚えやすく、やさしい響きもこの店らしさの一つです。


西陣にいながら、遠いバスクの風土と文化にふれるひととき。料理、空間、そしてご夫婦の人柄が重なり、ここでしか味わえない時間が静かに流れています。家族と、友人と、あるいはひとりで。食を通して文化に出会い、人とつながる。そんな豊かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

Special Thanks
RESTAURANTE CASA NANA
京都市上京区烏丸通寺之内下ル相国寺門前町647-8
地下鉄「今出川駅」より徒歩5分
Tel.070-3128-2900
Lunch 11:30〜15:00(ラストオーダー14:00)
Dinner 18:00〜22:00(ラストオーダー21:00)
定休日 火曜・水曜不定休
Editor
be京都 岡元麻有
Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。


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