NISHIJIN TODAY西陣のコラム

御守り袋づくりのパイオニア
西陣の意匠

「家内安全」「合格祈願」「縁結び」…。最近では寺社によって多種多様な御守りが授与されていますが、やはり御守りといえば、布地に金や銀の糸で織られた長方形のものを想像される方が多いのではないでしょうか。今回のコラムでは、西陣で御守り袋を製造・販売されている企業をご紹介します。

株式会社秋江は、安政二年(1855年)に京都西陣にて織物業を創業されました。
「御守り袋のパイオニア」であることを聞き、代表取締役 秋江弘一さん、取締役 秋江弘美さんにお話をお伺いしました。
縁の下の力持ち的な存在ですので、あまりお写真を多く出せないのが残念ですが、西陣にこのような元気な企業があり、嬉しくなりました。

▲御守り袋

御守り袋や授与品は、滋賀県の自社工場や丹後で製造され、堀川通に面した㈱秋江のビルでは、企画や加工がおこなわれています。多くのスタッフの方が、いつも忙しそうに、そして元気に働いておられ、たくさんの御守り袋や授与品が全国へ出荷されています。

社寺が多く建ち始めた平安時代、お参りにいけない遠方の方へ護符が配られ、それを筒や袋に入れる風習があったとされています。
神仏を示す「光」が魔除けを意味することから、㈱秋江の二代目 秋江義三郎氏は、金糸・銀糸を多用する金襴織物(豪華で黄金色に輝く紋様の織物)を素材とした御守り「錦守」を考案しました。その後、この「錦守」の形状が「御守り袋」として広く親しまれるようになったことから、㈱秋江は「御守り袋づくりのパイオニア」として認知されるようになったといいます。

さらに、「御守り」を受けられた方が「どこで受けた何の御守りなのか」が分かりやすくするために、織物に紋や社紋、寺紋を織り込むなど、よりふさわしい授与品の開発に情熱を注いでこられました。
織りの文様は、古典的なものや七宝など縁起の良いものが多いそうです。

▲願いが叶うように御守り袋は「叶(かなう)結び」で結ばれています

人々の願い事の種類は、時代とともに様々に進化してきました。
最初の御守りは、「家内安全」や「商売繁盛」など、家族や会社というコミュニティ単位の安全を願うものでしたが、高度経済成長とともに願い事がパーソナル化し、恋愛成就、安産祈願、交通安全、学業成就などを願うものに変化してきたと言います。
その変化にあわせて、御守りの色や形も願い事に見合ったものが好まれるようになりました。

また、昔よりも比較的簡単に旅行ができるようになり、多くの参拝者が寺社仏閣へ訪れるようになったことで、様々な御利益を持つ御守りや、ユニークなデザインの御守りが増加し、御守り袋 も多様化しました。

御守りはいわゆるグッズ販売ではないため、不良品は許されず交換がきかないものです。
ひとつひとつ、丁寧に手作りで制作されている㈱秋江の御守り袋から、柔軟さと愛情を感じました。

どこかで御守りを授与される時、大切に作っている方のことも想像してみると新しい発見があるかもしれませんね。

西陣界隈にもたくさん寺社仏閣があり、晴明神社では境内に桔梗の花が咲く時期にのみ授与される「桔梗守」や「ききょう土鈴」、御霊神社ではイチハツが咲くころに授与される「イチハツ守」、北野天満宮では梅の文様の御守り、護王神社では足腰の御守りなどがあります。神社の特徴や季節を感じながら、改めて御守りや授与品をみてみると面白いですね。

Special Thanks

株式会社秋江写真

株式会社秋江

〒602-0056
京都市上京区堀川通上立売下ル北舟橋町835番地
TEL:075-432-2255
URL:https://akie-net.com/

Editor

be 京都 岡元麻有写真

be 京都 岡元麻有

Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。

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