NISHIJIN TODAY西陣のコラム

屋根の上の小さな守り神ー鬼より強い!?鍾馗(しょうき)さん
西陣の意匠

まちを歩いていると、瓦屋根の上に、瓦製の人形「鍾馗(しょうき)さん」を見かけます。最近では住宅事情がかわったこともあり、瓦屋根が少なくなりましたが、鍾馗さんは厄除けの守り神として京町家の屋根でにらみをきかせています。
親しみを込めて「鍾馗さん」と“さん付け”で呼ばれています。

京都を中心に奈良、滋賀、三重、愛知など全国でもみられますが、地域によってさまざまな特徴があると言います。
京都の鍾馗さんは高さ約20~30cmのものが多く、他の地域に比べて小さめだそうです。
東日本では端午の節句に五月人形として飾られたり、旗や凧、掛け軸にも描かれています。

鍾馗さんのいわれは諸説有りますが、現在京都で唯一、鍾馗さんを製造している浅田製瓦工場によると、唐の時代に皇帝が病に伏している時に、夢の中に現れた鬼を鍾馗と名乗るひげ面の大男が退治し、病気が完治したことから祀られるようになったようです。
平安時代には、災厄や邪気、鬼などを追い払うため、平面の札に鍾馗さんの絵を描いて家の戸に貼っていたと言われています。室町時代になると陶器で作られるようになり、江戸時代後半には現在のような瓦製になりました。瓦製のものは京都が発祥です。

▲妙覺寺の鬼瓦

寺院の美しい屋根には、鬼瓦があります。鬼瓦によって払われた邪気が降りかからないようにするため、周辺の家の屋根には鍾馗さんを置くようになりました。京都はお寺の数も多いので広まっていったのかもしれません。

そんな鍾馗さんについて色々調べていると、元瓦屋さんの方から、鍾馗さんを譲りうけることになりました。
こんなに近くで鍾馗さんをみられることもないので、後ろ姿も撮影してみました。

数体の鍾馗さんを観察してみると微妙に顔もポーズも違います。

立体的なものもあれば、平面的なものもあります。
特徴としては、ひげ面、頭に何かかぶっている、剣らしきものを持っている…といったところでしょうか。閻魔様にも似てますね。

▲千本ゑんま堂の閻魔みくじ

早速、私も屋根につけてみました。

選んだ鍾馗さんには、鉄線が通せる穴がありました。
どうやら設置場所によっても、形状が異なるようです。
元瓦屋さんに伺うと、向かいの家にはじかれた邪気を払うために置くものを「お向かい鍾馗さん」と言い、設置する際には、向かい合わないように、にらみ合わないようにというのが暗黙のルールだそうです。
鍾馗さん事情を通して、‘人間関係に角を立てない’という京都人らしい気づかいが感じられました。

最近では、鍾馗が「商機(しょうき)」と同じ読みということから、商売繁盛を祈願したオリジナル鍾馗さんを店内に設置されるお店もあります。
色んなポーズや表情をしている鍾馗さん。鍾馗さんに注目しながらまちを歩くのも、宝さがしのようで楽しいですね。

 

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Editor

be 京都 岡元麻有写真

be 京都 岡元麻有

Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。

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