NISHIJIN TODAY西陣のコラム

まち全体がアート。西陣界隈の近代モダニズム建築-②
西陣の意匠

7 月24 日発信のコラムで西陣のモダン建築について取り上げましたが、まだまだお伝えしたい近代モダニズム建築がありますのでご紹介します。
コラム「まち全体がアート。西陣界隈の近代モダニズム建築-①」はこちら

ハリス理化学館同志社ギャラリーから烏丸通を南へ、下立売通の南西角には、日本聖公会聖アグネス教会があり、少し西に入ると平安女学院明治館があります。

日本聖公会聖アグネス教会は明治31 年(1898)に建設された日本聖公会京都教区の主教座聖堂です。アメリカの建築家 ジェームズ・マクドナルド・ガーディナーが設計し、京都市指定登録文化財に登録されています。外観は煉瓦造のゴシック様式の三廊式バジリカ型で、袖廊の小さい左右非対称の礼拝堂と、烏丸通に面する東北角にある三層の鐘楼が特徴です。

▲平安女学院明治館

明治館は、明治28 年(1895)にイギリス人ハンセルの設計により、平安女学院の教育施設として建設されました。わが国の近代建築史上きわめて価値の高い建築物であり、小さいながら風格をもった建物として評価されています。
平安女学院明治館の最大の見所は19 世紀のイギリスで流行したクイーン・アン・スタイルです。当時のイギリスにおける学校建築の流行をいち早く取り入れた点でも大変貴重な建物とされています。

そのまま少し西へ進むと、京都府庁旧本館があります。明治37 年(1904)竣工の国の重要文化財です。創建時の姿をとどめる現役の官公庁建物としては日本最古のものです。旧議場での土曜講座など、趣のある建築物を活用した取り組みはとても魅力的です。内部の意匠は美術工芸品を思わせる美しさです。

▲階段                                ▲旧知事室

中立売通の南西角にある、京都府とNTT との連携によるインキュベート(ベンチャー企業支援)施設「西陣産業創造會舘」もユニークです。
この建物は大正10 年(1921)に、京都中央電話局西陣分局(京都で3 番目の電話局)として建設されました。設計者の逓信省技師・岩元祿は、日本近代建築の黎明期、大正時代において、建築の芸術性をひたすら追い求め、わずか3 点の作品を残したのみで夭折した天才的な建築家です。この建物は、彼の現存する唯一の建物で、文化的・学術的に高く評価されており、2006 年には国の重要文化財に指定されています。

▲現在工事中のため、外観はみることができません。

まだまだご紹介したいモダン建築がありますが、最後におすすめしたいのが、堀川通二条城の北、バス停「堀川中立売」の傍に架かっている「堀川第一橋」です。明治6 年(1873)竣工で、御所と二条城を結ぶ公儀橋(幕府が維持管理する橋)を永久橋(⾧期間使用する橋)として架け替えた、時代を映す貴重な橋です。
実はこの堀川第一橋(中立売橋)は全国的にも非常に稀な石造真円アーチ橋で、京都市内における現役最古の石造アーチ橋であり、親柱や高欄なども、架橋当時の姿をとどめています。

明治期以降に建てられた洋館について、初期の建物は、外国人の技術者・建築家の手によるものが多いです。ですが、日本の技術の進歩によって、徐々に日本人の建築家の建物が増えてきました。
明治維新後の東京遷都で深刻な衰退に直面した京都では、積極的な近代化政策が展開されたことや、戦災を免れたことにより、質の高い多様な近代化遺産が、今も数多く残されています。しかも、それらの近代化遺産が京都ならではの景観美を構成しており、市民の日常生活にも深く融合しています。地域の方の歴史と文化を残そうという強い思いもあったのでしょう。古さの上に新しいものを重ねていく京都西陣です。

Special Thanks

日本聖公会聖アグネス教会(にほんせいこうかいせいあぐねすきょうかい)写真

日本聖公会聖アグネス教会(にほんせいこうかいせいあぐねすきょうかい)

〒602-8021 京都市上京区烏丸下立売角
TEL:電話 075-432-3015
URL:http://www.nskk.org/kyoto/stagnes/
日曜日の主日礼拝、年間行事、結婚式など。

平安女学院写真

平安女学院

〒602-8029 京都市上京区武衛陣町221
TEL:075-414-8155
URL(明治館について):http://head.heian.ac.jp/about/meiji.html

京都府庁旧本館写真

京都府庁旧本館

総務部府有資産活用課
〒602-8041
京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
TEL:075-414-5435
URL:https://www.pref.kyoto.jp/qhonkan/

Editor

be 京都 岡元麻有写真

be 京都 岡元麻有

Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。

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