NISHIJIN TODAY西陣のコラム

西陣における「紋」とは。
西陣の意匠

「紋意匠の魅力(6 月24 日発信)」についてコラムを書きましたが、西陣における「紋」について補足させていただきます。
※前回の「西陣織の設計図をつくるー「紋意匠」の魅力」はこちら

「紋」とは、紋章、紋様、文様、模様のことを表していて、柄・図案・意匠・デザインと同じ領域です。
主に工芸・デザインの領域で主要な役割をもつものです。「紋」といっても様々で、例えば「紋章」は企業や学校、家族がもつ装飾文様。日本では氏族、家の印として使われることが多いです。
その起源は平安時代の中期ごろから、公家が車や輿、装束、家具、調度品などに、他家と区別するため独特の模様をつけ、これがやがて家紋になったといわれています。


「文様」とは、主として染織品や器物などの表面に変化をあたえ、それを美しく見せるために用いられる装飾的な図柄で、模様とほぼ同じ意味と解釈されています。
建築において表現されることもあります。

そして、西陣において「紋」とは、経糸と緯糸の交わりによって構成され、描き出された柄のことを言います。糸によって模様を表すために、図案に基づいて「紋意匠図」で指図するというわけです。

経糸と緯糸との比率に適合した方眼紙があり、織物用図案より描きうつした図柄・色数・織物組織・織り方の指示をします。この方眼の1マスが経糸と緯糸の交わりなのですから、とても緻密な作業です。
そして次の工程を担う織りの職人さんたちに渡され、丁寧に織りあげられていきます。

歴史的な伝統文様もたくさんありますが、最近はこんなユニークな意匠(デザイン)も。


西陣連合青年会で製作された、西陣織のタータンチェック、その名も「Nishijin-tartan(西陣タータン)」です。「格子柄」は日本の伝統文様ですが、「タータンチェック」と名乗るためには、スコットランドのタータンチェック協会へ登録が必要であり、「Nishijin-tartan」も、見事タータンの名称を獲得しています。
碁盤の目である京都の町、京町家の格子が連想されます。しかも、西陣とかかわりの深い応仁の乱勃発の年、1467 年に合わせて、縞(しま)の割合が1:4:6:7 になっているとのことで、配色にもこだわりがあります。堀川通の秋の銀杏(1=黄色)、古都の紫(4=紫)、船岡山の豊かな緑(6=緑)、水とかかわりの深い西陣(7=水色)…。
応仁の乱で西陣が焼け野原になり、織物産業が壊滅状態になりましたが、戦いが終わると各地に避難していた織物職人たちが戻り、織物産業を再興し、「西陣織」という名前でさらに発展させてきました。
若い方も身に着けやすい、ネクタイやペンケース、名刺入れなども製品化されています。

今年(2022 年)が「西陣」名称の起源とされる応仁の乱(1467 年)から起算してちょうど555 年目に当たることから、「西陣呼称555 年記念事業」が実施されています。様々な角度から西陣に興味を持ってもらえたら嬉しいです。

※西陣呼称555 年記念事業についてはこちら

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岡元麻有写真

岡元麻有

Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。

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