NISHIJIN TODAY西陣のコラム

「西陣でアートを楽しむ!文化庁・府庁界隈まちかどミュージアム」
西陣の意匠

西陣のまちを歩けば、歴史に名を残す絵師や文豪が愛したであろう情景を感じることができます。
相国寺(上京区)には、伊藤若冲の作品はもちろん、お墓もあります。「燕子花図屏風」で有名な尾形光琳の菩提所は泉妙院(上京区)です。それだけではなく、京都御所には豊かな自然と歴史、文化があります。そして寺社仏閣のみならず、美術館、伝統工芸を体感できるアトリエや工房、近代モダニズム建築も残り、現代アートを楽しむことができるギャラリーもある、文化や芸術に包まれています。まさに、まち全体がアートでアカデミックなエリアです。

参考:まち全体がアート。西陣界隈の近代モダニズム建築
https://nishizine.city.kyoto.lg.jp/column/nishijin-architecture1/
https://nishizine.city.kyoto.lg.jp/column/nishijin-architecture2/

そんな西陣界隈では、紅葉が色づき始める頃に、「文化庁・府庁界隈まちかどミュージアム」が開催されます。
歴史的建造物や庭園の特別公開、伝統工芸や現代美術の展示、工房見学や文化体験などが実施される、文化や芸術がつながる楽しい企画です。
2023年(令和5年)は10月21日(土)~11月19日(日)に開催され、文化庁が京都に移転したことを記念し、文化庁界隈としても周遊できるように参画施設を増やし、「文化庁・府庁界隈まちかどミュージアム」として取組が拡充しています。

府庁界隈まちかどミュージアムは2009年(平成21年)にはじまった企画で、前身は、空間として文化的雰囲気をつくり、文化に触れて身近に親しむ機会を提供しようという「まちかど美術館」の一事業でした。その後、より地域に密着した取組とするため、周辺施設が委員をつとめる実行委員会による運営がはじまりました。一般社団法人 京都當道会、平安女学院大学など初年度から継続参加している施設も多く、年々参加施設も増加。地域と連携しながら継続開催しています。
普段はちょっと敷居が高く入りにくい印象の場所でも、このようなイベントがあることで、より身近に楽しむことができるのも魅力です。

参加施設が景品を提供しているまちかどスタンプラリーも人気です。2023年は全32か所のスタンプラリー参加施設のうち、5か所で設置されたスタンプを集める、または施設に設置されたQRコードを読み取って応募すると抽選で素敵な記念品が当たります。
散策しながらアート鑑賞はいかがでしょうか。

ガイドマップダウンロードはこちら▶https://www.pref.kyoto.jp/bunsei/news/machikado/r5.html

参加施設を4件、紹介します。

・平安女学院大学有栖館

企画立ち上げ当初から関わってきた平安女学院大学では、有栖館を特別公開。烏丸下立売という好立地にあります。

京都御所建礼門の前に建てられていた有栖川宮旧邸は、まず京都地方裁判所の仮庁舎として使用された後、1891年(明治24年)に民有地であった現在の場所に移築。京都地方裁判所の所長宿舎として2007年まで使用されていました。

その後、2008年8月には平安女学院がこの施設を取得。

国の登録有形文化財であり、壮な趣を持つ青天門、長屋門、主屋や十一代目小川治兵衞氏により作庭された「平成の植治の庭」が見所です。

平安女学院大学は府庁界隈まちかどミュージアムに当初から参加するなど地域連携にも積極的。学生目線でモデルコースをおすすめするなど、幅広い年齢層が楽しめるように、まちかどミュージアムの演出を盛り上げています。

学校法人平安女学院の毛利憲一理事長にお話を伺いました。
「学校の近所には美術館や老舗店、京都府庁旧本館のような近代建築もあるかと思えば、現代アートのギャラリーもあり、とても豊かで特色のある地域です。家や駅から学校までの往復だけではなく、一歩外へ出ると、発見できることがたくさんあります。」

通常非公開の有栖館ですが、普段は、学生たちが有栖館の主屋で仕出し文化を学ぶなど、京都文化と日本の伝統文化を体感し、実践しています。

学生と地域とのかかわりを大切にされ、学んだことを地域で生かす機会を創出し続けておられる様子に、強さと誇りを感じました。
国の登録有形文化財に足を踏み入れられるだけでもありがたいことですが、建物のみならず学生さんたちが関わって作り上げている秋の特別公開を一緒に楽しんでいただければと思います。

[公開案内]
「有栖館(有栖川宮旧邸)秋の特別公開」
開催日 2023年11月2日(木)~11月5日(日)
時 間 10時30分~16時30分(最終入館16時)
入 館 大人500円、大学生200円、高校生以下無料
住 所 〒602-8029 京都市上京区烏丸通下立売北西角

・中信美術館

中信美術館は、2009年(平成21年)の開館以来、京都中央信用金庫や公益財団法人中信美術奨励基金に関係する芸術家による作品展を企画・開催し、京都の芸術文化の振興と継承を目的に運営しています。

[展示案内]
「羽田家のキモノ展 登喜男・登・登喜 友禅の心を伝える」
開催日 2023年10月13日(金)~11月30日(木)
時 間 10時~17時(最終入場16時45分)
休館日 月曜
入 館 無料
会 場 中信美術館
住 所 〒602-8048京都市上京区下立売通油小路東入西大路町136−3
URL https://www.chushin.co.jp/bijyutu/

・西陣織会館
西陣織の紹介や資料を常時展示している西陣織会館。職人による実演や、制作体験など伝統の技を楽しむことができます。
2023年は西陣の織物業界に組合が創立されて140周年となります。1883年(明治16年)、西陣に織物組合を組織して発足。その後、
時代の環境変化に伴い、十数の組合を経て、1958年(昭和33年)に西陣織物工業組合、西陣着尺織物工業組合、西陣毛織工業組合の三組合が発足しました。その後、この三組合が1973年(昭和48年)に合併し、現在の西陣織工業組合となって今年で50周年を迎えます。

今回、節目の年を記念して、史料室では所蔵品のなかから、組合が創立した明治期の織物や三組合が合併した昭和48年前後の織物を中心に紹介されています。また、明治からこれまで歩んできた時代の変遷を感じることができる貼交屏風も圧巻です。
[展示案内]
組合創立140周年・三組合合併50周年記念「時代と歩む西陣織」
開催日 2023年9月5日(火)~12月20日(水)
時 間 10時~16時
休館日 月曜(月曜が祝日の場合は翌火曜日)
入 館 無料
会 場 西陣織会館
住 所 〒602-8216 京都市上京区堀川通今出川南入ル 西側
URL    https://nishijin.or.jp/blog/2023/34609/

・便利堂コロタイプギャラリー

美術印刷や文化財の複製を手掛ける便利堂が運営する、コロタイプギャラリーでも展覧会が開催されます。
コロタイプは写真術が生まれて間もない19世紀中頃にフランスで発明された、顔料を用いる写真プリント技法の一つです。便利堂は、長きに渡り継承してきたこの技術を多くの方に学んでいただくために、2017年以降コロタイプアカデミーを開講しています。本展では、2019年からアカデミーに通い作家本人の手で制作されたコロタイププリントと映像や銀塩写真作品を紹介。11月18日(土)には写真研究者 小林美香さんを招いた対談も開催されます。

©Benrido Inc.

コロタイプ工房を見学した後、古写真を用いた手刷りのはがきを制作できる体験会も要チェックです。

©Yoko Mazuki – a priori

[展示案内]
「真月洋子 写真展 priori」
開催日 2023年10月21日(土)~11月19日(日)(休み 10月28日(土))
時 間 10時~12時/13時~17時 土曜日休廊
入 場 無料
会 場 便利堂コロタイプギャラリー Benrido Collotype Gallery
住 所 〒604-0093 京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町302
電 話 075-231-4351(代表)
*駐車場あり(ギャラリー横、京都 便利堂本店前)
URL    https://www.benrido.co.jp/archives/5722

事務局である京都府文化政策室からは「文化庁、府庁界隈は美術館、工房、大学、能楽堂など、たくさんの施設が集まる、まさに文化ゾーンと言えるでしょう。このイベントを通して、この地域にある文化資源を多くの人に知ってもらいたいです。」、「まちかどミュージアムは、地域の文化的な施設の協力により長く続いてきました。文化庁の京都移転を契機に、この取組を通じて、文化庁・府庁周辺の文化活動を促進し、地域の活性化にも繋げていきたいです。」という熱い思いを伺いました。

この期間だけの特別公開施設もありますので、ぜひ足をお運びください。

◇イベント概要
令和5年度「文化庁・府庁界隈まちかどミュージアム」
日時 2023年10月21日(土)~11月19日(日)
場所 文化庁・府庁界隈

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Special Thanks

府庁界隈まちかどミュージアム実行委員会写真

府庁界隈まちかどミュージアム実行委員会

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
URL:https://www.pref.kyoto.jp/bunsei/news/machikado/r5.html

\Special Thanks/
・平安女学院大学有栖館
・西陣織会館
・中信美術館
・便利堂コロタイプギャラリー

Editor

be京都 岡元麻有写真

be京都 岡元麻有

Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。

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