西陣でアートを楽しむ!令和6年度「文化庁・府庁界隈まちかどミュージアム」その①
西陣の意匠
異常気象によって連日猛暑が続いた京都にも、ようやく心地よい秋の気配が感じられるようになりました。
そして、ここ西陣エリアでは今年も恒例の「文化庁・府庁界隈まちかどミュージアム」が、10月19日(土曜日)から11月17日(日曜日)まで開催されています。
この「まちかどミュージアム」は、2009年、空間として文化的雰囲気をつくり、文化に触れて身近に親しむ機会を提供しようという「まちかど美術館」の一事業としてスタートしました。
今年も文化庁・府庁界隈40施設が連携して、歴史的建造物や庭園の特別公開、伝統工芸や現代美術の展示、工房見学や文化体験などを実施。今年からは参画する施設や抽選で当たる賞品の数も増え、より深く、京都の文化と芸術が楽しめる内容になっています。
企画の一つであるスタンプラリーでは、名高い神社はもちろん、歴史的建造物や美術館、教会に至るまで幅広い施設にスタンプを設置。コンパクトなエリアに、感動と見どころがギュッと詰まった「文化庁・府庁界隈まちかどミュージアム」で、ぜひ文化・芸術の秋を満喫してください。
その中でも、おすすめしたい魅力的な施設を2つご紹介します。まず、その1として…。
公益財団法人「樂美術館」
16世紀から約450年にわたり京都で続く樂焼。天正年間(16世紀後半)、樂家初代長次郎が千利休の指導により、利休の侘び茶に叶う茶碗(樂茶碗)を生み出したのが始まりと言われています。唐物・高麗の茶碗が名品とされていた桃山時代に、和物茶碗を一から造り出すことは長次郎にとって新たな挑戦であり、また困難な作業であったことでしょう。そんな樂家歴代の作品を中心に、樂家に伝わった茶道工芸技術品、関係古文書など約1200点を所蔵しているのが樂美術館です。
轆轤(ろくろ)を使わずに手で成形する「手捏ね(てづくね)」という手法とヘラで削り落とし造りあげる樂茶碗。炎が燃え盛る窯の中から、一碗のみを熱いまま取り出すという特殊な焼き方も樂焼独特の手法です。誕生してすぐの頃には名前がなく、今焼茶碗や聚樂焼茶碗(じゅらくやきちゃわん)などと呼ばれていました。今焼とは、いま焼かれた新しい茶碗という意味で、誕生当時、その技術が前衛的であったことが窺えます。
手捏ねによるわずかな歪みと厚みのある形状は千利休の嗜好を反映したもので、利休の考えでは、狭い茶室が「洞窟」、楽焼の茶器が「泥」であり、もっとも人の手や技巧のない状態での「茶道」を想像させるものとの事。こうして初代・長次郎が造りだした「樂焼」は、令和の時代へと受け継がれ、16代に及ぶ樂家それぞれの当代が、長次郎の茶碗を精神的な軸としながら、独自のこだわりを取り入れて、新たな樂茶碗を生み出してきました。
ぜひ、樂美術館にて、初代から脈々と受け紡がれている歴代の樂茶碗に触れてみては如何でしょうか。
また本年12月24日(火)までは、樂歴代特別展として「樂之器 萬華乃彩」を開催。樂歴代の制作した向付、皿を中心に展示されており、二代常慶から樂歴代オールキャスト、まさに百花繚乱・萬華乃彩、季節の華が咲き乱れています。
これは一見の価値ありです!
西陣でアートを楽しむ!令和6年度「文化庁・府庁界隈まちかどミュージアム」その②はこちら
Special Thanks
府庁界隈まちかどミュージアム実行委員会
京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
URL:https://www.pref.kyoto.jp/bunsei/news/machikado/r6.html
樂美術館
〒602-0923 京都府京都市上京区油橋詰町87−1
https://www.raku-yaki.or.jp/museum/
【開館時間】10:00~16:30(入館は16:00まで)
※入館に際してご予約は必要ございません。
※入館には入館料が必要です(展覧会により異なる)。
【休館日】月曜(但し11月11日、祝日の場合は開館)、展示替え期間、年末年始
Editor
岡元麻有
Art Gallery be京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。