西陣織の設計図をつくるー「紋意匠」の魅力
西陣の意匠
美しい西陣織が織り上るまでの舞台裏をのぞいてみましょう。西陣で「紋意匠」の仕事を手掛ける、アトリエいがらし 紋意匠士の五十嵐亜紀さんに教えていただきました。五十嵐さんは平成14年に伝統工芸士の認定を受けておられます。
「西陣織」とは西陣地域で生産される”先染め絹織物”のことで、金銀糸を含めた多色で立体感のあるのが特徴です。西陣織が出来るまでにはたくさんの工程があり、各分野それぞれに高度な技術を保持しています。その中で五十嵐さんが携わっているのが「紋意匠」という仕事です。
これは簡単に言うと“織物の設計図を作る”という工程になります。
織物は経糸と緯糸(よこいと)が交互に組み合わさったものですが、それを織元と呼ばれるメーカーの意向に沿い、表現力豊かに、効率よく、また実用的な織物になるように設計するのが紋意匠士の仕事です。以前は全て手作業で行っていた作業もコンピューター化が進み、現在はパソコンでデータに落とし込むのが主流になっています。
とはいえ織物を生み出すには、機(はた)装置や糸密度、デザインや糸の組み合わせなど、一つとして同じものはないため、アナログ的で地道な作業が必要不可欠になります。機械の動きに過剰な負担がかからないか、糸を無駄なく使うことができるか、裏側の処理も美しく仕上がるか、結ぶときに爪がひっかからないかなども考慮し、数値化して組み合わせるプログラマー的な要素も持ち合わせています。
西陣織を拡大鏡で覗いてみると、その緻密な作業をさらに感じることができるでしょう。
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五十嵐さんのご厚意で西陣意匠紋紙工業協同組合にもお邪魔させていただきました。
明治時代に主流だった紋彫機(ピアノマシン)や、歴史ある貴重な紋意匠図の資料が保管されていました。以前は実演や体験などの機会があったそうなのですが、高年齢化が進んでいることや職人不足で対応が難しくなっているそうです。
紋意匠図から織り上げられた作品とお写真も拝見させていただきました。
平成21年に組合創立70周年記念として発行された郵便切手にもなった貴重な作品です。
普段、表舞台に登場する機会の少ない紋意匠図、紋意匠士という職業ですが、図案家、織り手、ユーザーのことを大切に考え、歴史とともに歩んでこられた素敵な世界が広がっており、とても愛おしく思えました。
Special Thanks
アトリエいがらし紋意匠士(伝統工芸士)五十嵐亜紀さん
帯をお貸しいただきました、ヤマキ織物株式会社様、資料のご準備などご協力いただきました西陣意匠紋紙工業協同組合様、ありがとうございました。
Editor
岡元麻有
Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。