NISHIJIN TODAY西陣のコラム

西陣・ストリートストーリー バスを降りてみたら⑤寺之内通編
西陣に学ぶ traditional culture, art, history and technology.

このコラムでは、西陣のとあるバス停を降り、次のバス停がある大きな通りまでまっすぐ歩いて出会える”体験”を紹介していきます。 前作の智恵光院通後編では、「今出川浄福寺」のバス停から智恵光院通を北へ、北大路通まで歩きました。 今回は寺之内通編として、「千本寺之内」のバス停から寺之内通を東へ堀川通まで歩いていきます。寺之内通はあまり広くはなく、静かなイメージがありますが、実は知る人ぞ知る小さなお店が立ち並ぶ、じっくりと歩きたくなる通りです。

 

前作はこちらの記事からご覧いただけます。

「西陣・ストリートストーリー バスを降りてみたら④智恵光院通後編」

https://nishizine.city.kyoto.lg.jp/column/nishijin-chiekouin2/

 

まち歩きを始めた午前10時前頃は、車通りも少し落ち着いていましたが、普段は交通量の多い千本通。出勤や帰宅時間には道も混み合いやすいので、余裕を持った計画をすると安心です。

▲今回のスタート地点「千本寺之内」の交差点

千本通から一歩寺之内通に入ると、車通りは一気に減り、閑静な町並みになります。ちなみに寺之内通は西行き一方通行となるので比較的歩きやすい印象ですが、歩道は狭いので注意しながら歩いてくださいね。

▲寺之内通を東へ。歩道は狭く、自転車も通るのでご注意ください

まち歩きをしたのは、10月下旬。日中の暑さもやっと落ち着き、日陰に入ると肌寒を感じる季節となりました。寺之内通は新しい建物と昔ながらの町家が混在する通り。そこに小さな店舗やオフィスも混じる、観光地では感じられないような「ここにしかない京都」が発見できた気がしました。

▲金継ぎやうるし、蒔絵が体験できる教室も発見

千本寺之内の交差点から東へ数分進んだところに見えてきたのが「七宝焼き体験教室」の看板です。
こちらが今回1つ目の取材先「かとれあ工房」さん。

看板のある道を奥に進むと入り口が見えてきます。

かとれあ工房では、七宝焼きのネックレスやキーホルダーの制作体験ができるということで、今回はキーホルダーづくりを体験することに。ちなみに七宝焼きとは、金属の表面に釉薬(ゆうやく)(ガラス質のコーティング材)やガラスのパーツを焼きつける日本の伝統工芸です。800度前後の高温で焼成を重ねながら、深みのある色彩と透明感を生み出していきます。古くは装飾品や工芸品として親しまれてきたそうですが、近年ではアクセサリーやインテリアなどにも採用される親しみやすい伝統工芸です。

今回は銅板に下地となる釉薬を乗せ、その上にガラスのパーツで模様を作るという体験内容。必要な用具は来店時に用意されていて、体験の説明も丁寧にしていただけるので、初めてでも安心して取り組むことができました。

また制作の前にサンプルの完成品から自分の作りたいイメージに近いものが選べます。作りたい作品のイメージがぼんやりしていても、そのサンプルをお手本にしたらきっと素敵な作品に仕上がるはずです。

▲七宝焼きの体験用具

好きな形のキーホルダーを選んだら、次にキーホルダーの銅板に乗せる下地となる釉薬の種類を選びます。

同じような色でも釉薬の種類によって仕上がりの色合いが変わったり、釉薬を銅板に乗せる厚みによって風合いが変わったりするそうで、思わず迷ってしまいました。

▲色とりどりの下地の釉薬

下地の釉薬が決まったら、いよいよ作業に取り掛かります。わたしは上に乗せるガラスの色が楽しめるように、下地は白を選びました。粉状の釉薬を水で少し溶いたものを銅板の上に乗せていくのですが、初めての感触でとても面白かったです。

▲サクサクしたような感触が面白い

ちなみに制作前には丁寧に注意点を説明していただけました。絵を見ながら解説いただけるので、安心して作業が進められます。

▲釉薬を乗せる前の説明

下地が乗せられたら、次にカラフルなガラスのパーツを乗せていきます。ビーズのようなパーツ素材は全てガラスでできていて、これを焼いて溶かすことで最終的な作品のデザインが完成していきます。ガラスの種類はもちろんのこと、パーツのデザインや大きさの違い、溶けた時の仕上がりなどもそれぞれ違い、じっくりと選びたくなります。

▲たくさんの種類のガラスパーツ

そして、焼くと色が変わるというガラスもありました。写真右側の透明のガラスは赤っぽいような色味になるそうです。

▲色が変わるガラス(右側の透明なもの)

好みのデザインでガラスを乗せたら、最後にお店の方に仕上げをしてもらいます。あまりにも楽しく夢中になってしまい、焼成前の様子の写真を撮り忘れてしまうほどでした。

▲少し糊が入った水をつけた筆で整えてもらいます

焼成前にしっかりと乾燥させた後、800度前後の高温で数分焼き、作品の完成となりました。焼き上がった作品は、つるっとした表面とキラキラ輝くガラスが印象的で、焼く前とはまた違った雰囲気に。想像以上の仕上がりに思わず笑みがこぼれました。

▲焼き上がりは熱いので要注意

体験は3歳から可能とのことで、カラフルでキラキラした体験は、きっと小さな子どもも大喜びだと思います。娘がもう少し大きくなったらまた一緒に挑戦したいです。

▲4歳のお子様が作った作品もみせていただきました。

体験時間はおおよそ1時間ほどで、その日に完成した作品を持って帰ることができました。素材を選ぶ楽しさや、焼き上がった時の達成感がある、あっという間の1時間となりました。ちなみに体験予約はオンラインからできます。1時間ごとに予約時間が設定されているので、観光の合間やまち歩きの休憩にもぴったりですね。

完成した作品を見るたびに、素材選びにワクワクしながら悩んだこと、初めての体験に戸惑いながらも夢中になって楽しんだこと、そして完成した作品を見て嬉しい気持ちでいっぱいになったことを思い出し、まち歩きの大切な思い出の一片となりました。

お土産物屋さん巡りも旅の楽しみだと思いますが、現地で自分が作った作品はまた一味違った思い出になるはず。ぜひ自分だけの西陣でのお土産を作ってみてくださいね。

かとれあ工房を出て、さらに東に進みます。

町家の前には「工房見学・手織体験」の看板もありました。こちらでもものづくりの体験ができるようです。

▲店内には西陣織の商品も

閑静な住宅街をさらに東に進むと、マンションの1階部分に可愛らしいお店が見えてきました。

▲フランス菓子コレット

コレットさんはフランス菓子のお店で、週末の土日の午後のみ営業されているそう。この日は平日で残念ながら開いていませんでしたが、また機会をみて行ってみたいです。

浄福寺通の交差点には緑が綺麗な休憩スペースがありました。ちょっと飲み物を飲んで休憩したり、スマホで調べ物をしたいときなどに便利で嬉しいですよね。

▲住宅街の中に映える緑のスペース

さらに東へ進むと、少しずつ小さなお店が増えていきます。

そして、今回2つ目の取材先は「西陣カフェ シュシュファボリ」さん。築200年以上の大きな町家を改装された洋食カフェです。

▲西陣カフェ シュシュファボリ

取材した日は別日で、2歳半の娘と一緒の来店。お店の一番奥にあるソファ席でゆったりと過ごさせていただきました。昼食後の来店だったため、今回はデザートとドリンクだけのカフェ利用でした。ランチメニューもとても充実していたので、次回は食事の時間にも行きたいと思います。

▲食事もデザートも充実したメニュー

店内は町家ならではの土壁や大きな梁が見えたりして趣を感じられながらも、レトロ可愛いインテリアが並ぶ居心地が良い空間でした。

▲天井が高くて開放感も感じられます

ベビーチェアがあったり、可愛らしい子供用の取り分け皿やコップもあったりして、小さな子供がいても安心して過ごせます。

▲子供用のお皿やコップ

デザートメニューも豊富で思わず迷ってしまいましたが、今回オーダーしたのは「バニラのシフォンケーキと旬のフルーツ添え」「ロイヤルミルクティー」「リンゴジュース」。

シフォンケーキは想像以上に大きく、旬のフルーツや生クリームもたっぷり乗っている、食べる前からワクワク嬉しい1皿でした。この日の旬のフルーツはいちじくで、新鮮で甘みがあり美味しかったです。ふわふわしたシフォンケーキは娘も大喜びで「もっと!」とカフェタイムを楽しんでいました。ホイップクリームやジャムのトッピングで、少しずつ味を変えながら食べ進められるのも嬉しいポイント。大切りのシフォンケーキもあっという間に食べてしまいました。

▲バニラのシフォンケーキと旬のフルーツ添え

ロイヤルミルクティーはアールグレイの茶葉を使用されていました。茶葉の香りも心地よく、甘いデザートにぴったりです。

▲ロイヤルミルクティー

デザートはテイクアウトメニューもあり、6種類のマフィンや今回オーダーしたシフォンケーキも選べるそう。次回はマフィンのテイクアウトもしたいと思います。

▲1つずつ試してみたいマフィンのメニュー

お店の居心地がよく、メニューも美味しかったのはもちろんのこと、店先で泣いてしまった娘に対して「泣いても大丈夫ですよ」とあたたかくお迎えいただいたおかげで、気持ちに余裕を持って楽しむことができました。娘との楽しいティータイムに、1人で過ごすゆったり時間にと何度でも訪れたくなるお店でした。

▲大宮通の交差点

大宮通を越えると、寺之内通はさらに道が狭くなるので歩く際にはご注意くださいね。そして、さらに東へ進むと見えてくるのが「妙蓮寺」さんです。

大本山妙蓮寺は、永仁2年(1294年)に創建された由緒あるお寺。四季折々の花が咲くことから「花の寺」としても知られています。桜、藤、ツツジ、紫陽花、彼岸花、芙蓉そして椿といった様々な花を季節に合わせて楽しめるそうで、また、まち歩きの楽しみが増えました。

▲ここから境内に入っていきます

境内は広く、様々な木々や植物があり、静寂を感じながらゆっくり過ごすことができます。

▲本堂

庭園や襖絵の拝観は寺務所へ進んでいきます。拝観料は500円で、要予約の宝物殿は別途300円でした。この日はふらりと立ち寄ったため、宝物殿の予約はしていませんでした。次回訪れる際には宝物殿の解放日に予約をしていきたいと思います。

▲寺務所

建物の中に入ると「十六羅漢石庭(じゅうろくらかんせきてい」」という見どころの1つでもある石庭が見られました。中央に近い大きな青石は「臥牛石(がぎゅうせき)」と呼ばれ、豊臣秀吉によって伏見城から与えられた名石なんだそう。この石を中心として仏教の世界が表現されています。石と白砂で表現されたお庭を眺めていると、時間も忘れて、心穏やかになった気がしました。

▲十六羅漢石庭

拝観をした時間は14時頃で、よく晴れた日だったおかげで和室には気持ちの良い日差しが入り、襖の表面の煌めきも楽しむことができました。襖絵は四季折々の表現がされていて、「春の野」「夏の池」「秋の山」「冬の川」となります。

▲「春の野」
▲「夏の池」

 

▲違い棚の小さな襖も花の絵がありました

ついお庭や襖などに目が行きがちでしたが、ふと窓の外を見ると綺麗な青紅葉が見えました。庭園や襖絵を楽しみながら窓から覗く紅葉を眺められるのは、この場所ならではの贅沢なひとときになりそうです。

▲窓から見えた青紅葉

この日も娘連れでの拝観だったため、あまりゆっくりとすることはできませんでしたが、少しの間でも心落ち着く時間を過ごすことができ、とても癒されました。

妙蓮寺を出て、もう少し東へ進むと見えてくるのが、今回のまち歩きのゴール「堀川寺之内」の交差点です。以前のコラムでも何度か登場しているのですが、堀川通のイチョウ並木の紅葉はとても綺麗で、見頃になるとたくさんの人たちが紅葉を楽しみに訪れます。銀杏並木の下には歩道が作られているので、木の真下に入ってゆっくりと散策できたり、写真が撮れたりと存分に楽しめるのも嬉しいポイント。まち歩きをした10月下旬は、まだイチョウ並木に紅葉は見られませんでしたが、他の木々は少しずつ色づき始め、秋の訪れを感じられました。

▲今年の紅葉も待ち遠しい

堀川寺之内の最寄りのバス停は、堀川通を少し北に進んだ場所にあるバス停「堀川寺ノ内」です。北行きのバスは金閣寺方面へ。南行きのバスは二条城、京都駅、河原町方面へ向かいます。主要な観光地へ乗り換えなしで行けるのは便利ですね。北行きの金閣寺方面へ向かうバスは比較的空いている印象ですが、南行きの京都駅や河原町方面行きのバスは観光シーズンに限らず観光客で混み合っていることが多いので、大きな荷物などがある場合は注意が必要です。

▲最近は観光バスも増えてきた堀川通

今回のまち歩きは、「千本寺之内」のバス停から、堀川通の「堀川寺之内」のバス停まで、寺之内通を東へ進んで行き、所要時間は20分~30分ほどとなりました。冬の到来を感じながら、「ここにしかない京都」を西陣で楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

Special Thanks

七宝焼き体験教室「かとれあ工房」写真

七宝焼き体験教室「かとれあ工房」

〒602-8495 京都府京都市上京区新猪熊町392
電話番号:075-451-6669 090-6326-5855
営業時間:10:00~16:00頃

西陣カフェ シュシュファボリ写真

西陣カフェ シュシュファボリ

〒602-8405 京都市上京区寺之内通智恵光院西入ル大猪熊町61
電話番号:075-202-8581
営業時間:定休日 水・木曜日・不定休
ランチ11:30〜15:30(L.O 14:00)
ディナー 18:00〜21:30(L.O 20:30)
HP https://www.instagram.com/chouchoufavori/

大本山 妙蓮寺写真

大本山 妙蓮寺

〒602-8418 京都市上京区寺之内通大宮東入妙蓮寺前町875
電話番号:075-451-3527
拝観時間 10:00~16:00
休日:毎週水曜日、年末年始 ※年間行事などにより拝観できない場合があります。
HP  http://myorenji.or.jp/

Editor

山下 りか写真

山下 りか

西陣への移住を機に、組子細工インテリアブランド"J LIFE gifts”をオープン。
大宮上立売のショールームで、暮らしに馴染む組子細工を紹介中。(現在は臨時休業中)
旅行や街歩きが好きな1児の母。

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