NISHIJIN TODAY西陣のコラム

季節を巡る和菓子 ― クリスマス・お正月
季節を巡る京菓子

黄金色に輝いていた銀杏並木も、ライトアップでより一層美しさを増していた紅葉もシーズンが過ぎ、冬支度をする西陣です。12 月はクリスマスやお正月の準備であわただしさと活気にあふれています。
そんな中、心を癒してくれるのが、享和3 年(1803 年)創業、鶴屋吉信本店(堀川今出川)にある「フラワーツリー」です。今出川通に面した広いショーウインドウには、いつも季節を感じる演出がされており、西陣に暮らす人にとっても、鶴屋吉信の店頭ディスプレイは季節の楽しみのひとつです。

こちらの紅白のポインセチアツリーは、なんと和菓子でできています。このような創作菓子は「工芸菓子」と呼ばれています。

「生砂糖(きざと)」と呼ばれる素材で、触るとパリッとしているにもかかわらず、本物の植物のような柔らかさが表現されています。それでいて華やか!

この時期だけに販売される真っ白な干菓子「ホワイトクリスマス」もコーディネートされていて、吸い寄せられるように、足をとめてご覧になられる方がたくさんおられます。


さらにレアなのは、「クリスマスツリー」「ノエル(ひいらぎ)」「鈴の音」という3種類の生菓子。12 月23 日(金)、24 日(土)の2日間限定で店頭発売されます。(全国の生菓子販売店舗に限る。オンラインショップでは取扱なし)
クリスマスのケーキのように、とっておきの生菓子をお楽しみいただくのもいいですね。

■「花びら餅」と新春だけの「大福茶(おおぶくちゃ)」
さて、お正月の準備も進めていきましょう。
令和5年の干支は「卯」。神話や童謡にも登場し、福を招く長い耳、ぴょんぴょんと愛らしく跳ねる姿は飛躍の意味もあり、縁起が良いとされています。


迎春やうさぎにちなんだ和菓子も豊富に準備されていて、目移りしてしまいます。

そして、お正月に欠かせない菓子としてぜひご紹介したいのが、「花びら餅」です。
京都御所の近くに店をかまえる鶴屋吉信では、代々「御所鏡(ごしょかがみ)」の銘で謹製されています。


平安時代の宮中で行なわれた元日節会に「歯固(はがため)」という祝儀があり、鏡餅、大根、押鮎(おしあゆ)、橘などを食べて歯の根を固め、長寿を願ったそうです。

この歯固に食べる品が「菱葩(ひしはなびら)」といわれる新年を祝う餅になり、そこから餅のかわりに白の外郎(ういろう)や求肥(りゅうひ※)に白味噌あんと紅ようかん、蜜漬けの牛蒡(ごぼう)入れて包んだ「花びら餠」が生まれ、京のお正月にかかせないお菓子となりました。
茶道の初釜のお菓子としても広く親しまれています。

※ 求肥(りゅうひ)について
「ぎゅうひ」という呼び方が一般的ですが、関西地方では「りゅうひ」と読むことも多く、「ぎゅうひ」よりもさらにマイルドに品を込めて、鶴屋吉信ではあえて「りゅうひ」と呼んでいます。かつての求肥は牛の皮のように薄黒い色とやわらかさから「牛皮」と名付けられていたのですが、肉食をしない仏教思想にもとづき「求肥」と漢字を充て、これが地域によっては「りゅうひ」と呼ばれるようになったそうです。

また、本店お休み処では、お正月限定で「羽子板」の銘々皿と「お多福」の抹茶碗でお抹茶と生菓子のセットを楽しむことができます。おめでたい組み合わせで、迎春気分も高まります。

※左写真は干支「寅」のものです。迎春には右写真「うさぎ」のお饅頭(卯の賀)が用意されます。

また、お席にご案内される際にはお茶をいただけるのですが、新春だけの「大福茶(おおぶくちゃ)」がこの期間限定で用意されます。

※大福茶と羽子板の銘々皿にのせた生菓子「卯の賀」がいただけるのは、京都の松の内である、1 月15日(日)まで。お多福の抹茶碗は節分まであります。

色んな思いを乗り越えて、飛躍の1年になることを願います。
少しずつ前進を感じる昨今ですが、何かとあわただしく過ごしておられる方も多いと思います。
早めの準備、そして年始ならではの福を呼び込むおもてなしをぜひお楽しみください。

Special Thanks

鶴屋吉信写真

鶴屋吉信

〒602-8434 京都府京都市上京区西船橋町340−1
TEL:075-431-1331
URL:https://www.tsuruyayoshinobu.jp/

Editor

岡元麻有写真

岡元麻有

Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。

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