NISHIJIN TODAY西陣のコラム

季節を巡る京菓子「上巳の節句・雛まつり伝統の菓子ー。」
季節を巡る京菓子

■上巳の節句と雛まつり

立春を過ぎ、まだ寒さが残るとはいえ、少しずつ小さな春の息吹が感じられるようになりました。3月3日は、五節句のうちのひとつ「上巳(じょうし)の節句」です。

五節句は、同じ奇数が重なる5つの日のこと。古来、陽(奇数)が重なると陰が生ずるとされ、節句の日には邪気祓いの行事が行われてきました。一月のみ七日ですが、一月七日(人日)、三月三日(上巳)、五月五日(端午)、七月七日(七夕)、九月九日(重陽)を指します。

中国で上巳に行われた禊の風習が伝わったもので、日本では、詩歌を詠み、川に盃を浮かべる風流な遊び「曲水の宴」や、人の身代わりとして紙や、藁で作った形代(かたしろ)を川に流す厄払いなどが行われました。この形代が流し雛の形に変わって行き、のちに雛人形として飾るようになりました。


現代のような、雛人形の華やかな段飾りが登場したのは江戸時代の頃と伝わります。
京都では、宮中の装束やしきたりを忠実に再現した有職雛(ゆうそくびな)を飾るのが主流で、お内裏様は向かって右、お雛様は左側に飾るのが京都の雛飾りの特徴です。

品のあるお顔立ちも京都らしいですね。西陣にも優雅で格調高い、京人形を制作されている職人さんがたくさんおられます。

■上巳の節句・雛まつりの食

上巳の節句と食は古くから切り離せないもので、はまぐりは2枚の貝が一対になっていることから、夫婦円満を象徴する縁起もの。ひしもちの赤、緑、白の3色は、桃の花、萌え出る緑、雪に見立てたものともいわれます。他にも、ばらずしなど、華やかなお膳でハレの日を祝います。

■「とらや」の雛菓子―「あこや」

室町時代後期、京都で創業した和菓子屋「とらや」。
「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」という経営理念のもと、直営店のほか、 主要都市の百貨店、パリにも店舗を構えます。西陣界隈には、京都御所西、烏丸通に面した直営店の「とらや 京都一条店 」、一条通を西に入った場所に喫茶店舗の 「虎屋菓寮 京都一条店」があります。

「とらや」は、永年にわたり御所の御用を勤めてきました。少なくとも寛永5年(1628年)より前から、虎屋菓寮 京都一条店のある場所にお店を構えていたことが分かっています。

「虎屋菓寮 京都一条店」では、モダンで広々とした店内で庭を眺めながらゆったりと過ごすことができます。和菓子や日本文化に関わる書籍など約600冊を自由に読むことができ、併設の「虎屋 京都ギャラリー」では、京都にちなんだ展示や講演会も開催しています(不定期)。

そんな「とらや」で楽しむことができる、この季節限定の生菓子は少し個性的な形をしています。


「あこや」という銘で、羊羹製生地に丸めた白餡がの っています。阿古屋貝(あこやがい)が真珠を抱いた様子が表現されています。

「あこや」は関西地方を代表する雛菓子のひとつで、宮中の儀式に用いた『いただきもち』が起源とも 言われており、『いただき』または、『引千切(ひちぎり・ひっちぎり)』ともよばれます。

引千切の名前の由来は諸説ありますが、上巳の節句のお祝いでたくさんの料理や菓子を作る宮中は、餡を餅に入れて丸める時間がないほど忙しく、引き千切った餅に餡をのせた菓子を作っていたから、という説もあります。


「とらや」の「あこや」は慶安4年(1651年)より記録がある伝統の雛菓子です。
「あこや」が販売されているのは京都地区の生菓子販売店のみ。ぜひ限定生菓子を楽しんでください。
<販売期間2023年2月16日(木)~3月3日(金)>

■「とらや」 の雛菓子―「雛井籠(ひなせいろう )」


「とらや」の雛まつり限定商品は他にもあり、節句に彩りを与える人気商品です。
その中でも、もうひとつ紹介したいのが、「雛井籠(ひなせいろう)」です。
安永5年(1776年)に雛菓子用に作られた、高さ18㎝ほどの小ぶりな井籠(せいろう)を模した容器に、可愛らしい雛菓子が詰められている商品です。
雛壇にも飾れるほどの可愛らしいサイズで嬉しいですね。
もとになった雛井籠は現存しているというので、ますます愛着がわきます。


こちらの雛井籠に描かれている虎などのデザインは、私たちがよく目にする「とらや」の手提げ袋や羊羹の化粧箱などにも用いられていることも教えていただきました。


雛井籠に描かれている、虎の字を囲う「鐶(かん)」(箪笥の取っ手の金具を紋章化したもの)は、店内の照明のデザインにも取り入れられています。
お庭から見える土蔵、和菓子職人の技、 味わい、全てが上質です。
和菓子を楽しみ、和菓子を取り巻く日本の美を感じることができる「虎屋菓寮 京都一条店」の素晴らしい空間にぜひ足を運んでみてください。

Special Thanks

虎屋菓寮 京都一条店写真

虎屋菓寮 京都一条店

〒602-0911
京都市上京区一条通烏丸西入広橋殿町400
TEL:075-441-3113
営業時間:10:00〜18:00
ラストオーダー:17:30
※席数を減らし、入店されるお客様の人数を制限させていただきます。
※メニューを縮小して営業しております。
詳細は店舗までお問い合わせください。
休業日:元日/毎月最終月曜日(12月を除く)
※諸般の事情により休業日を変更する場合もございますのであらかじめご了承ください。

とらや 京都一条店(直営店)写真

とらや 京都一条店(直営店)

〒602-0911
京都市上京区烏丸通一条角広橋殿町415
TEL:075-441-3111
営業時間:9:00~18:00
URL:https://www.toraya-group.co.jp/
(株式会社虎屋)

Editor

be 京都 岡元麻有写真

be 京都 岡元麻有

Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。

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