NISHIJIN TODAY西陣のコラム

「本満寺の牡丹三種」
西陣を彩る花や植物

今年の花は何もかもが早く咲いているようです。例年ゴールデンウィーク辺りに見頃を迎える『牡丹(ぼたん)』の花も4月初旬には開きはじめ、既に初夏の様相です。
今回は、京都一の名所といっても過言ではない本満寺の『牡丹』をご紹介します。

寺町今出川を少し北に上がるところに、日蓮宗本山の本満寺があります。正式名称は「広宣流布山 本願満足寺(こうせんるふざん ほんがんまんぞくじ)」と言うそうで、応永17年(1410年)、関白の近衛道嗣(このえみちつぐ)の嫡子である玉洞妙院日秀上人(ぎょくどうみょういんにっしゅうしょうにん)が朝廷より敷地三万坪を与えられ、新町通今出川の地に開山しました。

その後、天文8年(1539年)に現在の地に再建したのは関白近衛尚通(ひさみち)であったというように、近衛家と大変深い関係があるところから、お寺の西門の瓦にも『近衛牡丹』の意匠が見られます。

▲近衞牡丹の瓦

この瓦にある『牡丹』の花は『花中の王』と呼ばれ、また『百花王(ひゃっかおう)』『富貴花(ふうきか)』という異名もある大変尊いお花です。

『牡丹』の紋は江戸時代には「菊紋」「桐紋」「葵紋」に次いで権威のあるものとして摂家の近衛家、鷹司家、武家では島津家、伊達家などの限られた大名にしか許されない家紋でした。

その由緒を伝えるため境内には白、ピンク、牡丹色、真紅色など、色とりどりの牡丹が百株ほども植えられています。中には一番遅咲きの品種である、珍しい黄色の牡丹も見ることができます。(因みに真冬に咲く寒牡丹も少し植栽されています)

地元住民の中でも、一部のお花愛好家しか知らないであろうとっておきの情報なのですが、本満寺のご厚意で牡丹が一番の見頃を迎えた頃にひっそりと本堂奥のお庭も公開してくださっています。この奥庭はまさに秘密の花園といった雰囲気の場所で、毎年公開を楽しみにしています。公開日は年により異なりますので、出会えたら運が良かったと喜んでください。

さて、瓦の『近衛牡丹』と色とりどりのお花の『牡丹』という、二種類の『牡丹』を紹介しました。ではタイトルにあります「牡丹三種」の最後の『牡丹』は・・・?

▲牡丹と牡丹桜の共演

それは、『牡丹桜(ぼたんざくら)』という別名もある『八重桜・関山(かんざん)』です。
この桜は赤みが強く、見た目が豪華な遅咲きの『桜』です。桜の花漬けを湯に浮かべて楽しむ「桜湯」では開きかけた牡丹桜の花が塩漬けにされています。

豪華絢爛な『牡丹』と『牡丹桜』の共演が楽しめるのも今の時期だけです。
大変豊かな気持ちになれると思いますので、是非お出かけくださいませ。

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本満寺

〒602-0802
京都市上京区寺町通今出川上る2丁目鶴山町16
TEL:075-231-4784

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石川利佳甫

上京区在住。華道嵯峨御流 総司所教授
be京都こどもいけばな教室(文化庁)特別講師
御霊神社いちはつの会

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