NISHIJIN TODAY西陣のコラム

地図でみる西陣8「around 西陣MAP 東陣をめぐる5つのポイント」
around 西陣 MAP

 

おかげさまでご好評いただいている「around西陣MAP」も、いよいよ第8弾となりました!

「西陣を周遊して楽しむこと」を目的に、エリアの魅力を伝えながら散策を提案する

「around西陣MAP」。

今回のテーマは、西陣の歴史を語るに欠かせない「東陣(ひがしじん)」エリアです。

 

■東陣とは

今から550年以上前、室町時代に起きた「応仁・文明の乱」(1467年~1477年/以下「応仁の乱」)。

守護大名家の家督争いに端を発した内乱で、室町幕府の八代将軍・足利義政の後継者問題などが絡み合うこととなり、西軍と東軍が対立しました。「西陣」という地域名が、西軍(総大将:山名宗全)の陣地があったことに由来するように、東軍(総大将:細川勝元)が陣地としたエリアを「東陣」と呼びます。

日頃は「西陣」エリアに含まれる地域ですが、当時の陣営にもとづけば、下記の範囲は「東陣」となります。

▼東陣のおおまかな範囲

北:上御霊前通

南:一条通

東:相国寺・御霊神社付近

西:小川通~堀川通

 

京都のまち、特に上京を焼け野原にしたと伝わる「応仁の乱」。教科書にも載っている有名な戦乱ですが、今回の「around西陣MAP」では、歴史にくわしくなくても興味深く散策できるように「東陣」の見どころを5つのポイントに分けてご紹介します!

 

 

■ポイント① 応仁の乱が起きたのは神社!?

 

「戦国時代の幕開け」といわれる「応仁の乱」。

その始まりの地とされるのが、地下鉄鞍馬口駅近くにある「御霊神社」です。当時は数千の兵がこの一帯で争ったといわれ、境内には戦乱の歴史を伝える石碑と説明板が建立されています。現在は緑豊かで落ち着いた雰囲気の「御霊神社」。桜やイチハツ、紅葉など、四季折々の風景も見どころです。

門前の「水田玉雲堂(みずたぎょくうんどう)」がつくる「唐板(からいた)」は、御霊神社の歴史と関わり深い、平安時代にルーツを持つ名物煎餅。「応仁の乱」が起きた時に廃絶しますが、戦乱の終息後に「水田玉雲堂」のご先祖によって再興されたと伝わります。

 

■ポイント② 室町幕府のあった場所!?

室町幕府の三代将軍・足利義満は、現在の烏丸今出川交差点の北西側に邸宅を造営しました。「室町殿(むろまちどの)」「室町第(むろまちてい)」などと呼ばれ、これが室町幕府の名前の由来になったといわれています。

また、花咲く庭の美しさから「花の御所」とも呼ばれました。そんな華やかな邸宅も1476年に全焼。現在は室町今出川の北東角や「大聖寺」に建つ石碑、烏丸上立売の南西角(同志社大学 寒梅館)に保存された石敷遺構が往時の歴史を伝えています。

▲今出川室町 にも石碑「従是東北 足利将軍室町第址」が残る

 

■ポイント③ 幻の七重の塔!?

1399年、足利義満は「相国寺」の東南側に高さ約109メートルの巨大な七重大塔を建立しました。「東寺」の五重塔が約55メートルなので、およそ2倍の高さということになります。

この塔は1403年に焼失、四代将軍・足利義持により同じ場所に再建された塔も1470年に再び焼失して、以後は再建されることがありませんでした。現存していれば地域のシンボルになっていたことでしょう。

ちなみに2025年1月に公開された大泉洋さん主演の映画「室町無頼」では劇中に七重大塔が登場しているようです。

そんな幻の塔を想像しながら、塔跡を示す石碑のもとへ足を運んでみましょう。

すると、西郷隆盛の邸宅や、ノーベル物理学賞で有名な湯川秀樹さんご一家の住まいが付近にあったことを伝える、情報盛りだくさんの石碑が見られます。

 

■ポイント④ 両軍の境界線は川!?

小川通沿いには小川と書いて「こかわ」と読む川が流れていました。

「応仁の乱」ではこの川を挟んで東軍と西軍が激突。両軍の武将の邸宅も近隣にあったようで、「小川児童公園」には東軍総大将・細川勝元邸の説明板、堀川通の西側には西軍総大将・山名宗全邸の駒札や石碑があります。

また、江戸時代のものではありますが、小川寺之内に置かれた「百々橋(どどばし)」の礎石のように、小川通付近には小川に架かっていた橋の遺構も点在しています。

 

■ポイント⑤ あの名所もかつては…!?

▲「上京税務署」の塀にかかる説明板「真如堂縁起絵巻に見る応仁の乱」

京都市内にある歴史深い有名寺院の中には「応仁の乱の頃、じつは東陣界わいにお寺がありました」という場所がいくつかあります。

たとえば、左京区の紅葉名所「真如堂(真正極楽寺)」(説明板は「上京税務署」の塀)。「真如堂」が有する重要文化財の絵巻「真如堂縁起絵巻」にも、応仁の乱の様子が描かれています。

また、寺町通の「革堂(こうどう)行願寺」、新京極の「誓願寺」、京都大学近くの「百万遍知恩寺」も、かつては一条小川付近にあったお寺です(説明板は「小川なかよし広場」)。

 

このようにポイントをしぼって地域をひも解くと、一見難しそうなまちの歴史が身近に感じやすくなりませんか。

ぜひ「東陣」に息づく京都の歴史を、マップとともに楽しくめぐってみてくださいね。

 

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MAP&エディター まご

京都の観光・文化系が得意分野の編集ライターであり、絵描きとしても活動。
モーニング好きがこうじて朝がテーマのエッセイ本「よあけのたび」シリーズも刊行している。

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岡元麻有

Art Gallery be京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。

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