NISHIJIN TODAY西陣のコラム

菖蒲と蓬の香りで邪気を祓う-端午の節句「軒菖蒲(のきしょうぶ)」
西陣に学ぶ traditional culture, art, history and technology.

「軒菖蒲」とは5月4日の夜に菖蒲と蓬を束ねたものを軒に飾り(投げ上げ)、5月5日を迎え、不浄を祓うという平安時代からみられる風習です。五節句の一つである端午の節句は、旧暦の5月5日で、この頃は雨季にあたります。悪病のはやる時期でもあり、香り高い真菖蒲や蓬を家々の軒端に飾ることで邪気を祓う力があるとされ、行われてきました。

ですから、軒菖蒲は「軒端(のきば)の菖蒲」ともいわれるそうです。

菖蒲飾りは「奉書(ほうしょ)紙」「水引」を用いて「真菖蒲」と「蓬」を束ねてつくり、軒や床の間に飾ります。飾りとして薬玉(くすだま)なども作られます。

5月4日に軒菖蒲、菖蒲飾りをした後、5日の夕方に下げて、菖蒲をお風呂に浮かべる菖蒲湯や枕の下に入れる菖蒲枕を楽しみます。このように古来から植物の力を様々な方法で最後まで活かしてきたのですね。

▲五節句ノ内皐月(国会図書館)

端午の節句の飾りには、こいのぼりなどの「外飾り」と、鎧・兜・武者人形・馬や虎、若武者人形などを飾る「内飾り」があります。内飾りを総称して五月人形と言いますが、中世までは馬を用いた競技と菖蒲や薬玉の飾りが中心だったようで、五月人形が節句人形として登場するのは、江戸初期頃からです。

ピンと伸びた菖蒲の葉は刀の形に似ていることから、「剣」に見立てられ、子どもたちはこれを腰に差して合戦遊びに興じました。また、菖蒲は武芸を尊ぶ「尚武」や「勝負」という言葉と発音が同じであることから武士の間で大切に使われ、やがて庶民に広がっていきました。家紋や武具、馬具などにもよく見られます。

西陣界隈でも端午の節句を楽しむことができます。上京区役所では「京の五節句と年中行事-端午の節句展」、京町家ギャラリーbe京都では「菖蒲飾り・薬玉づくりのワークショップ」を行っています。

〈インフォメーション〉
♢「京の五節句と年中行事」端午の節句展
令和6年4月30日(火)~5月2日(木)9:00-17:00
場所:上京区総合庁舎1階 区民交流ロビー
主催:京の暮らしの文化普及啓発実行委員会、上京ふれあいネット運営協議会
URL:https://nishizine.city.kyoto.lg.jp/event/nishijin-tanngo202405/

職人が多く集まる西陣には、携わっている伝統工芸士も多く、上京区役所の展示では、工房武久の甲冑、京人形司 大橋弌峰の勇ましい五月人形の兜を菖蒲でつくった珍しい菖蒲兜も展示されます。

♢「菖蒲飾り・薬玉ワークショップ」
令和6年5月5日(日)10:00‐12:00
場所:be京都
参加費:3,000円 ※要予約
URL:https://nishizine.city.kyoto.lg.jp/event/bekyoto240505workshop/

幼いころからお花や植物に触れ、文化を学ぶこどもいけばな教室をはじめ、芸術発表や年中行事を楽しむ場を運営するbe京都では、今年も様々なワークショップが開催されます。

健やかな成長を願うお守りの意味を込めた端午の節句飾り。子どもたちはもちろん、菖蒲飾りを通じて、古来より自分の家や家の前を通る方々を浄め、菖蒲を投げ上げることで、空気そのものを浄めていたのでしょう。 穢れを祓い健康を祈る行事なので、西陣のまち全体が清々しく感じられること間違いなしです。

Special Thanks

Editor

be京都 岡元麻有写真

be京都 岡元麻有

Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。

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