NISHIJIN TODAY西陣のコラム

地図でみる西陣7「around 西陣MAP こだわりの調味料探訪」
around 西陣 MAP

夏から秋にかけて、西陣エリアでも百日紅(サルスベリ)が美しいです。濃いピンク色から淡いピンク色、白色などの花が咲いていて、西陣の青空や老舗の趣に映えています。

五山送り火が過ぎると風が幾分か涼しくなる京都ですが、とりわけ今年の夏は例年より暑く、夏の疲れが取れにくい方も多いのではないでしょうか。

「西陣を周遊して楽しむこと」を目的に、エリアの魅力を伝えながら散策を提案するマップを制作していますが、今回のaround 西陣MAPでは、「こだわりの調味料探訪」と題して、西陣にお店を構える調味料の店舗を紹介します。

豊かな調味料で、美味しくごはんを食べて元気に過ごしましょう!

■「さしすせそ」だけじゃない!奥深い調味料市場

これまで調味料市場では、「さしすせそ」と呼ばれる基本的な調味料が主流でした。これは、和風の煮物などの場合、まず砂糖を加え、その後、塩、酢、しょうゆ、みその順に加えることをさしています。

調べてみると、「さしすせそ」の他にも、異国料理向けの香辛料といったものから、トマトケチャップ、ウスターソース、油、酒の一部も調味料に含めることがあること、昆布やかつお節などのうま味成分を含むうま味調味料も調味料の一つとされることがわかりました。

食材の持ち味や全体の味を調整したりするものを調味料と考えて、広い視点でMAPを楽しんでいただけると嬉しいです。

平安京以来、都がおかれた京都は、山間の地であるにも関わらず、人・モノ・財が集まってきました。京都では、海から遠く離れているため新鮮な海産物の入手が難しく、運ばれる海産物の保存に酢が用いられたことから、酢の醸造が発達しました。

また、色落ちを防ぐ「色止め」や発色を良くする効果から、酢は西陣織にも活用されていたため、かつて西陣には酢の醸造蔵が多く存在し、西陣で180年以上酢をつくり続ける老舗「孝太郎の酢」の周辺には7軒の酢屋があったそうです。

「孝太郎の酢」では、創業当時の製法でつくるお酢の販売はもちろん、果汁の分量を味見しながら調整して、自分好みのぽん酢がつくれる『Myぽん酢づくり』という体験を実施しています。

『Myぽん酢』のレシピは店側で保存してくれるので、再注文することも可能で、ラベルには好きな文字や写真を入れることもできます。

■出汁の文化と専門性の高い調味料

京都の出汁の文化は、北前船で来る昆布と和歌山から来る鰹で出汁を取り、煮炊きものやお吸い物の食文化が生まれたことで発展してきたと、京料理の店主に教えていただきました。

特に京都の水は、ミネラル分の少ない軟水であることから、昆布の旨味成分が抽出しやすいというが特徴あるそうです。

また、西陣には、西陣織の繁栄とともに旦那衆が愛した料亭が多くありますが、静かな町並みの中には、味噌、醤油など専門性の高いお店もあります。

本田味噌本店の創業は江戸時代の天保元年で、宮中のお料理用に味噌を献上したのがはじまりです。

いにしえよりの伝統の味を守りながらも、時代のニーズ(嗜好) に合せた味噌造りを探求し、料亭などだけでなく家庭でも愛用される味噌を造り続けています。

どれを食べてもおいしい味噌、どんな味噌がよいかなど、お店の方が相談に乗ってくれます。

澤井醤油本店は、京都御所の近くにあった酒蔵を引き継ぎ、明治より醤油造りを続け、「まるさわ」の名で広く知られています。

毎年春先に仕込まれる醤油は、木桶や釜などの代々伝わる道具を用いて、口伝による昔ながらの製法で造られます。お店のそばを通るだけでも良い香りがします。

■毎日の食に欠かせない油も奥深い調味料

健康志向の高まりもあり、近年は油にこだわる方も増えています。

山中油店は創業200年以上の歴史ある油の専門店。食卓に油が登場するようになったのは、明治以降のことですが、「油断大敵」と言われるように、灯火の「油を断つ」と火が消えてしまうことから油は生活に欠かせないものとされてきました。

油の用途は時とともに移り変わり、貴重品から家庭の料理に欠かせないものとなりました。山中油店では、食用、お手入れ用、建築用などの様々な油を趣のある空間で見つけることができます。

第3土曜日にはマルシェも開催されています。

■目の前でブレンド!唐辛子や山椒

七味唐辛子の長文屋(ちょうもんや)では、目の前で唐辛子を好みに合わせてブレンドしてくれます。一歩店内に入ると、スパイシーな良い香りが広がっていました。

「大辛、山椒多めを5つ。」とツウの頼み方をした男性に、思わず「それいいですね!よく来られるんですか?」と聞いてみると、京都のうどん屋さんで教えてもらってから「ドはまり」されたようで、「うちとこは同じものしか食べてません。」とのこと。

お店の方も思わず「おおきに、ありがとうございます。」と言われ、店内はとても楽しい雰囲気になり、地元から愛されているお店ということを実感しました。

■magoさんと調味料マップよもやま話

イラストマップを制作してくれたmagoさんにもお話をききました。

●制作してみていかがでしたか?

雑誌等で調味料をテーマにした特集を見かけることはありますが、「西陣」というエリアに限定してその特集を組むというのは珍しいように感じました。そしてそれが実際にできてしまう西陣がすごいと思いました!

●オリーブオイル、はちみつなど「調味料」というくくりにいれるべきかどうか、悩んだものもあったかと思いますが、京都、西陣らしい特徴などありますか?

調味料の意味を調べてみると、「食材の持ち味を調整したり全体の味を調整したりするもの」ということだったので、「さしすせそ」の枠を飛び出して選定することができたのかなと思います。

西陣は京都御所や西陣織との関係が深く、様々な「食文化」が磨かれてきた地域であり、料理を作るための良質な調味料が必要となるのは必然だったのかなと思います。

そして老舗だけでなく、比較的新しいお店も営業されているのをみると、新しい取り組みを受け入れるという、地域の気風や特色があるのかなと感じました。

●このマップはこれまでのマップの中で、最も進化系のマップになったと考えていますが、今後、同様のマップを作成する可能性などはありますか?

北野天満宮は梅の名所であり、師走になると大福梅を授与されています。これはお正月の大福茶用ですが、梅は昆布にも蜂蜜にも合うし、お酒にもなるし、うめ味噌もおいしいです。北野天満宮の梅と西陣の名店コラボの可能性に一人でワクワクしました。

・・・
magoさんのお話しを聞いて、チョコレートに山椒がマッチするらしいなど、西陣の商品のマリアージュをMAPに表現できたら楽しそうだなと思いました。around 西陣MAPには、まだまだ発展していく可能性を感じています!
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朝旅・モーニングをテーマに執筆活動。
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岡元麻有

Art Gallery be京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。

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