「今、西陣の移動モビリティが面白い。②」
西陣に学ぶ traditional culture, art, history and technology.
前回のコラム(8 月24 日発信)で、「シェアサイクルPiPPA」について取り上げましたが、西陣には、他にもユニークな移動モビリティがあります。今回のコラムでは2 社の取組を紹介します。
※前回のコラム「今、西陣の移動モビリティが面白い。①」はこちら
まず、プロダクトからグラフィック、景観や空間に至るまで幅広いデザイン事業を展開する創造集団「GK京都」の榎本社⾧にお話を伺いました。
いずれも「まち全体をトータルでデザインしていきたい」、「このまち仕様に」というGK 京都の想いが形になっている移動モビリティです。
■執事(=バトラー)が移動をサポート
GK 京都のエントランスで迎えてくれるのは、低速小型EV「ミニマム移動促進モビリティ(ミニマムモビリティー)」の「バトラーカー」です。英語でバトラー=執事という意味で、様々な人の移動のニーズに応えられるように開発されました。遠隔操作も可能です。開発にはGK 京都を含む計10 社や大学の研究室が協力しました。
道路交通法の観点から、公道を走行する上では1名しか乗ることができないなど、実用化には課題があります。ですが、自動でまちの案内をする、観光でも日々の買い物でも人や荷物の運搬を行うなど可能性が広がります。GK 京都が得意とする、まちの景観になじむデザインになっているという点も非常に可能性を感じます。移動もできるストリートファニチャーとして、例えば停車中はベンチ代わりに休憩できるなどの提案もできます。まさに「これから」の移動モビリティです。
■電動車椅子と運搬がひとつになったNEKOTORA(ネコトラ)
2022 年にデビューしたばかりの「NEKOTORA(ネコトラ)」も大変興味深いです。
運搬用の手押し車「猫車」と軽トラックを組み合わせた造語ですが、電動車椅子のように乗車できるほか、簡単な操作で手押し車のような形状に変えて運搬にも使える4輪車です。自動車免許を返納後のシニアを想定した電動モビリティですが、農作業時、キャンプ、マルシェなど幅広いシーンでの活用も想定されます。
■子育て世代を応援する夢の自転車
幼稚園や保育園、毎日の送り迎えに活躍する自転車。西陣では駐車スペースも限られていることから車より自転車ユーザーが多いのではないでしょうか。そんな子育て世代に嬉しい、ルーフ付の3 輪子乗せ電動自転車もGK 京都ではデザインされています。雨の日の走行をアシストしてくれる夢の乗り物です。
いずれも「社会の役にたつことをやり続けるために」という切り口で開発されており、デザインの力が加わったソリューションが提案されています。移動モビリティが「このまち仕様」になることで、まち全体の魅力がますます高まることが期待できます。
さらに、世界でも数少ないサービスロボットの開発・製造・販売を専業に行っているロボットメーカー、株式会社テムザックのRODEM(ロデム)からも目が離せません。代表取締役議⾧ 髙本陽一さんにお伺いしました。
■「乗れるロボット」RODEM
RODEM は、どんな人も境界なく移動を楽しめる、真のバリアフリーを実現するユニバーサルデザインのパーソナルモビリティです。走行時の目線が高く、歩行者と同じ目線で会話をすることが可能なのでRODEM に乗ったまま観光、ハイカウンターでのやり取りなどを行うことができます。
最高時速6km のモデルは、電動車いすとして歩道を走行可能で、運転免許不要です。研究開発中の最高時速12km のモデルは、ミニカーとして車道を走行可能で、運転免許が必要となります。
今後は、京都のまちでRODEM をシティモビリティとして普及させていきたいと考えていて、シェアリング運用の確立を目指しています。これに乗ると、たとえ足が不自由でも健常者と全く同じように移動ができるようになります。さらに多くの人にこの世界を楽しんでいただけるように、RODEM に乗ることでしか体験できない付加価値のある、次世代の観光を提案したいと考えています。
▼RODEM の最近の動向
・京都市企業誘致サイト Kyo-working で、代表取締役議⾧ 髙本陽一さんのインタビュー記事公開中
https://kyo-working.city.kyoto.lg.jp/article/voice/2022-08-01-01/
・にしZINE「にし人」のコーナーで代表取締役議⾧ 髙本陽一さんのインタビュー記事公開中
https://nishizine.city.kyoto.lg.jp/people/people-4473/
Editor
岡元麻有
Art Gallery be 京都館長。関西学院大学卒業後、広告代理店にて企業の販売促進を手掛ける。京町家で生活しながらbe 京都で文化芸術活動を発信。京都市プロジェクト推進室にしZINE担当。京都市上京区カミングレポーター。